ビジネス

2021.08.14 08:30

ものづくり企業必見!自社の強みを引き出すWhatever流・アイデアの広げ方


プロダクトアウトがすべてではない


また、川村はプロモーションの手法としてこんなヒントも出した。

「PRの形としてはプロダクトアウトがベストですが、規模や時間の関係上、それが難しいこともあるので、最終プロダクトのイメージをビデオデモにしたり、一点もののプロトタイプを先に発表するという出口もあります」。最近では、規模やテクニカル上のフィジビリティ(実現可能性)を考慮してR&Dの前段階で、クラウドファンディングでプロトタイプを発表したり、プロダクトのアイデアを映像化して先に世に出したりするケースもある。またプロダクトのほかにも、技術をもとにつながるコミュニティやアワード、スクール化など、自社のR&Dやノウハウなどを生かした派生コンテンツも考えられるという。

川村が率いるWhateverのクリエイティブチームは、由紀精密の強みについて「あえてtoB/toC向けにアイデアを分けて考えるのではなく、経営陣を始めとした開拓精神や職人的なこだわり、技術開発のかっこよさが、広く誰にでも伝わるような形で体現されているコンテンツを世に出すべき」と分析する。


由紀精密社長 永松純

これらの説明を受けて出たのが、「すごいですね......」といった冒頭の永松の声である。そしてこう続けた。「由紀精密のファンづくりについては、私自身悩んでいるところです。BtoCとして名前を知っていただき、例えばSEIMITSU COMA(自社製品の高精密なコマ)は買っていただけるかもしれませんが、事業の柱ではありません。他の主軸の事業にどう繋がっていくのか。ここを深掘りするのか、視点を変えるのかやってみたい気がしています」

また、アイデアを先出しする事例について、永松は「私たちは、モノを作らなきゃいけないといつも思っていました。アイデアを具現化してプロトタイプを作らなきゃと。アイデアを100個出して手を打って、1、2個に絞るというのは製造業にはきつい。ですが、構想を映像化してリリースするのは、なるほどと思いましたね」と語った。

Whateverによると、レンダリングや、ビデオのような形でアイデアを先に発表してしまうことで、社会的にそのアイデアがどのくらい需要があるかが可視化され、うまく話題化されればそこから技術的にも金銭的にも投資しやすくなるという。今は終了したが、グーグルのGlassといったプロダクトはそういった過程で生まれた。


Whatever CCO 川村真司

今後の方向性としては、まずはブランド確立を目的としたアイデアを考えていく。また「ファンづくりのための話題化」と「新事業開拓の可能性につなげる」という目標達成に向けて、グラデーションをつけて企画提案をすることに。そして次回はいよいよ、今回のクリエイティブ・ブリーフをもとに両社がそれぞれ一枚絵にアイデアをまとめて持ち寄ることになった。

ここからどんな企画が生まれるのだろう。また、果たしてそこから実際にR&Dに向けて採用されるアイデアはあるのだろうか──。

文=督あかり 写真=苅部太郎

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