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国際基準のエグゼクティブ・プレゼンス最前線

米体操女子のエース、シモーネ・バイルズ / Getty Images

東京五輪は、いよいよ終盤を迎える。今回は「当たり前」のない困難な大会となったが、アスリート文化の「変化への一歩」と思えた出来事もあった。米体操女子のエース、シモーネ・バイルズ選手の途中棄権発表と最終戦での再登場である。

バイルズ選手は、7月27日の女子団体決勝で米国の跳躍ローテーションに参加した後、精神健康上の問題を理由に棄権を発表。その後、1週間の時間を経て8月2日に翌日の体操女子種目別平均台の決勝で復活することを発表した。結果は銅メダルだった。

アメリカのエースとして多くのメダル取得を期待されていた彼女にとって、五輪参加期間はどれだけ波乱の時間だったことだろう。

なんとか自分を保ちつつ「棄権」を伝えた


バイルズ選手は、7月27日に行われた記者会見で「メンタルヘルスを第一に考える」と自らの言葉で話した。その姿は堂々としたものだった。

以下にコメントの一部を紹介する。


“Put mental health first because if you don’t then you’re not going to enjoy your sport and you’re not going to succeed as much as you want to. So, it’s ok sometimes to even sit out the big competitions to focus on yourself. Because it shows how strong a competitor and person that you really are, rather than just battle through it.”

“心の健康が第一だと考えます。そうでなければ、スポーツを楽しむことができませんし、思うように成功できません。だから、時には大きな大会を欠場して自分に集中するのもOKです。なぜなら、ただ戦い抜くのではなく、自分がどれだけ強い競技者であり人間であるかを示すことができるからです”


自分の言葉で棄権を発表するその姿は、「オリンピックのために何が何でも命をかける」といった、かつてのステレオタイプなアスリートとは大きく違った。

彼女は会見で、顔をグッと上げて気丈に振る舞っていたのだが、全体的に顔がぎこちなく動いているかのようで、目の表情は固く、眉の動きも感情的に見えた。声も、喉に負担がかかっているような出し方だった。

特に印象的だったのが「メンタルヘルスを第一に考える」と話した時。それまでデスクの上で重ねていただけだった両腕を上げて組み、自らを抱きしめるようなポスチャーをとったのだ。息が少々荒くなったのも感じられた。

「これ以上聞かないでほしい」という気持ちの現れと同時に、その場にいる自分を精一杯保っていたのだろうと察する。

文=日野江都子 編集=田中友梨

メンタルヘルス
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