エンタープライズブロックチェーンは「幻滅期の底」を打ったか?

ジョーデン・ウッズ(左)とラディカ・イエンガー(右)


ブロックチェーン技術の進化の歴史を見ると、4つの世代に分けることができます。第1世代はビットコイン、第2世代はイーサリアムを始めとするスマートコントラクト技術を搭載したブロックチェーン、第3世代は企業等向けの許可型(パーミッションド)ブロックチェーンで、これにはスマートコントラクトやガバナンスモデルなどの機能も搭載され、例えばHyperledger FabricやR3 Cordaなどが含まれます。

そして、今まさに第4世代のブロックチェーンが登場してきたところです。これは「ハイブリッド型ブロックチェーン」とも言えるもので、非許可型ブロックチェーンと許可型ブロックチェーンの良いところを取り入れつつも、分散度合いなどについては個々のユースケース向けに自由に設計できるような非常に柔軟性のあるブロックチェーンです。

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ジョーデン・ウッズ氏

ラディカ:ここ最近のブロックチェーンプロジェクトの一つのテーマとして、「ソーシャルグッド(公益)」があります。倫理的な行動を促し、社会全体の利益を最大化するようなプロジェクトです。これは、「エシカル消費(人・社会・地域・環境に配慮した消費行動)」などの消費者の意識の変化や時代的な流れが背景にあります。

これまでは、競争を勝ち抜いた少数の企業が市場を支配していましたが、ブロックチェーンによって「お互いに競争はするものの、一緒にデータを共有し合うことで社会全体により良いインパクトをもたらすこと」が可能となりました。

これはブロックチェーンが「共有されたレジャー(台帳)」を通して組織間のデータ共有を容易にすることによって、より多くのデータを基盤として新たな次元でのビジネスが可能になるからです。これまでは「自社 vs 他社」という物の見方だったのが、「社会全体」という物差しができて、それがブロックチェーンによって加速化されていると思います。

吉川:17年〜19年はある意味エンタープライズブロックチェーンのブーム期で、多くの大手企業がコンソーシアムに参加し、ブロックチェーンの実証試験等を行いました。その中で、実証試験止まりになってしまったプロジェクトも多く存在します。これは革新的技術の導入期においてはよくあることですが、エンタープライズブロックチェーンにおいて成功したプロジェクトと、しなかったプロジェクトではどのような差があると思いますか?

ジョーデン:エンタープライズブロックチェーンのコンソーシアムが成功する要因は複数あると思います。まず、対象のユースケースとブロックチェーン技術の間でプロダクト・マーケット・フィットがあること。さらに、ビジネスモデルが確立されていて、参加企業がどのようなデータを共有し、それによってどのような便益を受けるかがはっきりと定義されていること。さらに、参加する個々の企業が共通の目的を共有し合い、強い参加動機を維持できるガバナンスモデルがあることなどが挙げられます。
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文=吉川絵美

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