ライフスタイルブランド「NIO Life」より、イギリスの大御所プロダクトデザイナー、トム・ディクソンとコラボレーションしたバッグシリーズ。
ライフスタイルブランド「NIOライフ」のグッズも、高級で洗練されたテイストだ。そして価格帯も「高級」。タンブラーで4500円相当、NIOロゴ入りパーカーは6000円相当。法外に高いわけではないが、安いものは日本以上にどこまでも安く買える中国では、決して安くない価格である。
しかしながら、グッズを購入する顧客のうち半分はNIOのオーナーではないという。「NIOのある生活」が、多くの人にとって「憧れ」としてとらえられている。それが、オーナーにとっては「特別なブランドの一員である選ばれた自分」を意識させるのに大きな役割を果たしているのだ。
同じくイギリスの著名ファッションデザイナー、フセイン・チャラヤンによるアパレルライン。NIOはグローバルなデザイナーコミュニティの構築を狙う。
付帯サービスの圧倒的利便性
NIOの提供価値は、むろん「素敵な場所やグッズ」にとどまらない。さまざまなサービスのうちでも特徴的なのが「バッテリー交換サービス」である。ガソリン車に比べるとEVで面倒なのが充電だろう。急速充電でも30分近くかかってしまう。そこでNIOはパートナー企業を得て、各都市に「スワップステーション」を整備。オーナーは無料で月6回までバッテリーごと交換してもらえる。完了までわずか3分。ガソリンスタンドに行くより手軽だ。
そもそも、中国の大都市では駐車スペースを確保できるほど土地が余っておらず、高額所得者でも路上に駐車せざるをえないケースがある。前出のAさんもそのひとり。「私の家は駐車場がなく、充電スタンドを設置できない。EVを買うとショッピングセンターなどの充電スタンドに行くはめになり面倒だと思っていたから、無料でバッテリー交換してくれるサービスは便利」とうれしそうに語った。
加えて、年18万5000円相当(月払いだと月1万7000円)のサブスクリプションサービスに加入すると、アプリで呼んだスタッフが家まで車両を取りに来て充電してくれる。これらは総称して「NIOパワー」と呼ばれ、オーナーの生活を快適にしているサービスの一つだ。
また、総称して「NIOサービス」と呼ばれる付帯サービスも充実している。事故発生時のロードサービスに期限や走行距離の制限がなく、永年無料でオーナーに提供。こちらも年20万~23万円相当(価格は車種による)のサブスクリプションサービスに加入すると、点検、修理、メンテナンスはもちろん、自宅での受け渡し、洗車、空港での駐車、運転代行まで、海外の高級車ブランドが手がけてきたようなサービスが受けられる。このサービスの評判は上々で、購入時に知って追加するオーナーも多い。
NIOは車両購入後にも手厚いサービスがある。内容は2021年6月現在(図版提供:hoppin)
新しいもの好きでNIOを買ったCさん(上海在住で金融系の会社に勤める30代後半の女性オーナー)は2週間に1回はNIOハウスへ行き、子どもと一緒にイベントへ参加することもある。いま使っているスマホケースも、そのイベントでつくったものだ。彼女は言う。「これまでの伝統的なブランドだと、クルマを買うまででサービスが終わり。でも、NIOの場合は買ってからが始まりだったの」。
オーナーに刺さるのは、時間の削減や手間の省力化などの合理性だけではない。「クルマにかかわる面倒を気にせず、生活を楽しんでもらう」という一歩先の思想によって設計されたサービスなのだろう。
李CEOがカーオーナーと長期的な関係性づくりをする納得の理由、さらに2022年デリバリー予定の次世代車「ET7」の全貌とは? 続きはForbes JAPAN 8月号でお読みいただけます。