駅弁マニア、俳優髙嶋政宏の「シウマイ弁当」作法
ちなみに『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編4巻』には、崎陽軒マニアの著名人の食べ方も掲載されている。
たとえば俳優、髙嶋政宏氏は、やはり俳優だった両親(故・高島忠夫、寿美花代)に連れられ、幼少の頃に日本全国を回って駅弁に「開眼」したという生粋の駅弁マニアという。感動した駅弁店の店主には、自筆で感謝の手紙を書いたこともあるほど。
自宅がある世田谷に近い新横浜駅から新幹線に乗ったことが、崎陽軒との出会いだった。
俳優 髙嶋政宏氏
そんな髙嶋氏のシウマイ弁当の「お作法」は、実に芸術的だ。まず、食前の準備として特茶(もしくは黒烏龍茶)、ミネラルウォーター、ほうじ茶を買っておくという。弁当を食べ始める前にのどが乾いていた場合に飲むのはかならず「ほうじ茶」。特茶(黒烏龍茶)は絶対に飲まず、食事中のために取っておく。
弁当の置き方は、「ご飯手前で縦に」派だ。
最初に手を付けるのは「蒲鉾」という。二口、三口で食べきる。その次は玉子焼き、これを半分。玉子焼きを食べて白飯がかじりたくなったら、左下俵の4分の1くらいをかじる。
薄味の名脇役、蒲鉾から箸をつけるあたりは、AIには真似ができない人間ならではの技かもしれない。
AIの味覚分析を元にした「食べ方」の未来は
食べ方の最適解を発見する上では、いかに高得点な食べ合わせを無駄なく拾っていけるか、それをたどるルートが鍵だ。普通に食べていたらまずはやらなかったであろう「シウマイ(何もつけない)×筍煮」の食べ合わせなど、AIが味覚分析をしたから判明した「味のペアリング」もいろいろあった。
ただ、AIが万能かというと、そういうわけでもない。「おいしい」という感情は食感や香りなどさまざまな要素が重なって生まれるものだが、「味覚センサーレオ」はまだこの分野には手付かずだ。この先、技術の進歩によって、今回の味覚分析の結果が変わってくるのか、あるいはAIが我々人類の感じる味覚に追いつくのはもっと時間がかかるのか、それともAIが、人間の味覚を凌駕してしまうのか。その結論はまだ先のことになりそうだ。
※本稿は、「食べ方学会」編集部が制作した同人誌『食べ方図説・崎陽軒シウマイ弁当編』からの転載である。
鈴木隆一◎AISSY代表取締役社長、慶應義塾大学特任講師。2008年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了後、AISSYを設立。近著に「悪魔の食べ合わせレシピ」(講談社)。
食べ方学会◎「料理の鉄人」「とんねるずのハンマープライス」「ウンナンのホントコ!」などの番組のディレクターである市島晃生氏率いる、「最適な食べ方」を探求する「学会」。多くの同人誌を発刊している。