I study technology disruption in individuals, companies and societies.

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フィナンシャル・タイムズ紙に、「‘Obedience and fear’: the brutal working conditions behind China’s tech boom(「服従と恐怖」──中国のテックブームを支える過酷な労働環境)」と題する非常に興味深い長文記事が載った。

午前9時から午後9時まで週6日働くことを指す「996」という言葉に集約される、中国の労働者の過酷な働き方の内実を伝えるとともに、こうした長時間労働に中国のテクノロジー企業がどれほど頼っているか問いかける内容だった。この慣行は多数の従業員の死につながっており、より広範な社会問題にもなりつつある。

中国で「良い労働者」とは、残業は1日3時間、月36時間までという法律の規定などお構いなしに、身を粉にして働く人を指すらしい。言うまでもなく、過度な長時間労働のカルチャーを尊ぶことは法律を軽んじているということになるが、こうした慣行は中国のテクノロジー業界などではびこっている。

こうした現状に、中国の労働者も声を上げ始めている。若手テックワーカーらは、プログラム共有サイトの「GitHub(ギットハブ)」で「996.ICU」というプロジェクトを始めた。名前には「996を続ければICU(集中治療室)送りになりかねない」という意味が込められており、厳しい職場環境で働く労働者たちに、大手テック企業などへの不満を吐き出せる場を提供している。

過酷な勤労カルチャーは、中国ではアリババ創業者のジャック・マーのような業界幹部らから擁護されてきた。最近はシリコンバレーでも、セコイア・キャピタルの幹部マイク・モリッツのように、労働時間の短縮や在宅勤務、ワークライフバランスの向上を重視する欧米諸国の傾向に異を唱える人が出てきている。

FTの記事はとくに、ロンドンで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議との関係で重要だろう。会議で米国は、中国やロシアのような専制国家に対する支持をどうにか確保し、ジョー・バイデン大統領は会議後の記者会見で「わたしたちは急激に変化する21世紀に、民主制国家が専制国家と対抗できるのかという競争に入っている」との認識も示した。

ただ、G7は中国に対して、少数民族の扱いや強制労働といった問題で圧力をかけることを支持しているものの、全般的なコミットメントを各国から引き出すのはきわめて難しい仕事になっている。

世界の競争の条件を規制し、従わない国を孤立させるような国際的な取り決めは、たとえ世界で最も豊かな国々であっても、一部の国の集まりによって実現できるものなのか。その成否は、取り決めがどんな内容になるか、そしてその内容をどこまで強制できるかにかかっていると言えそうだ。

編集=江戸伸禎

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