小野:つまり、経営者になった。
植野:四六時中、経営の視座で本気でファミマの数年先を考え抜いて、他の経営層との議論に負けても、裏で手を打ったりしました。
小野:澤田さんは、柳井(正)さんと仕事をしてすごく視座を上げました。植野さんは年齢からするとコンサルに行ったのは遅かったけど、澤田さんの下であっという間にデジタルオフィサーになったから、成長の爆発が起きたんですね。
植野:僕は建設業界のDXを推進するANDPADのCMOに就きましたが、44歳でスタートアップに行くのは遅いですか?
小野:スタートアップ業界も成熟期に入りつつあって、プロ人材のマーケットと接近しているから、ちょうどいいと思います。以前、僕はANDPADの稲田武夫さん(*5)とお会いして「すぐに別次元の経営陣を組むタイミングが来ます」と言ったんです。ある意味、植野さんは少々変なキャリアを歩んでいる(笑)。異能なリーダーが必要です。昔のスタートアップは「ネットベンチャー」みたいな呼ばれ方で、そこまで経営に複雑さが求められなかった。でも、今はスタートアップ自体がインダストリーに突っ込んでいますから。
*5 1984年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、2008年リクルート入社、人事・開発・新規事業開発に従事する。2014年、副業として立ち上げていたオクト(現ANDPAD)を創業し、代表取締役に就任。「みんなのリフォーム」立ち上げ、プロジェクト管理アプリ「ANDPAD」をリリース。
植野:しかも、リアルインダストリーで。
小野:それこそDXそのものですが、スタートアップが産業変革を担い始めた。日本のエスタブリッシュメントに挑戦していける会社が増えたんです。将来は経営者を志している次世代人材などに対して、スタートアップの経営者やCxOという選択肢を提示できる段階になりました。
植野:キャリアを描く1本の道として立ってきた。
小野:そう。だからジョブセキュリティを気にせずに挑戦する人が増えてほしいですね。
「植野さんは人生をこうしたい、世の中をこう変えたいと現状に甘えないよさがある。“健全な反逆性”をもつリーダーの才があります」
「CxO」のビジョン、三カ条(小野壮彦)
一、匂い立つ「香り」──アイデンティティの確立。
二、退路を自ら断ち、腹をくくって「勝負」できること。
三、経営者が描く「時間軸」に対し、議論を辞さないこと。
小野壮彦◎グロービス・キャピタル・パートナーズ「GCP X」ヘッド。早稲田大学商学部卒。27歳で起業後、楽天へ事業売却。Jリーグのヴィッセル神戸の取締役として企画運営・チーム強化を担った後、エゴンゼンダーでヘッドハンティング、アセスメント、コーチングを100社以上の企業、約5000人の経営人材へ実施。ZOZO PB事業本部長としてZOZOSUITの開発、海外72カ国へのグローバル販売展開を推進。2019年より現職。
植野大輔◎DX JAPAN代表。早稲田大学政治経済学部卒業、MBA取得、商学研究科博士後期課程単位満了退学。三菱商事入社、在籍中にローソンへ約4年間出向。ボストンコンサルティンググループを経て、ファミリーマートへ。ローソン同様、ファミペイの垂直立ち上げなどDXを統括・指揮。2021年よりANDPAD上級執行役員CMO。