本後編では、前編の記事の最後で紹介した、急激な変化を起こすために必要だった4つのキーとなる考え方を、より詳細に、事例を含めて説明させていただきたい。
1. リアル店舗を活かしたOMO
──Amazonと同じ戦い方をしない
OMO(Online Merges with Offline)という言葉を頻繁に聞くが、流通のOMOには2つの種類があると考えている。
1つ目は、オフライン(リアル店舗)中心の流通が、その店舗など「リアルな場をもつ強み」を活かした上で、オンラインやデジタルを活用してMerge(統合)していくもの。2つ目は、逆にオンライン主体のECなどが、その強みを活かして「リアル店舗に参入」していくものだ。大手流通のデジタル化が成功している理由は、売り場をもつ強み、すなわち実際にお客様と接することのできる場や在庫、スタッフなどを活かしながら、オンラインの技術や仕組みを取り入れるOMOの戦略をとっているからである。「vs Amazon」と考えたとき、リアル流通の強みをどう活かしていくかが重要になる。
実際に、リアルを活かしたOMOの成功事例をみてみよう。Walmartをはじめとする、米国の大手流通がコロナ禍前に導入したのが「BOPIS(=Buy Online Pickup In Store)」である。
これは、オンラインで商品を購入・支払いを行い、店舗では受け取りのみで完結する仕組みだ。サービス開始当時はカウンターで受け取ることが主だったが、ロッカーでの受け取りに進化、その後、多量のオーダーが来ても対応できるように、車に乗ったままの受け取りであるCurbside Pickupが主流となった。リアルな店舗、在庫、従業員、店舗オペレーション、駐車場等の“オフライン”があって効果的な導入ができ、そこにオンラインをMerge(統合)することにより、消費者の利便性をあげるサービスになったのである。コロナ禍で非接触の受け取り方法が人気となり、各社のオンラインオーダーが急増した。多くの人員が必要になる配送とは異なり、急増する需要に応えられるという、リアルを活用するならではの強みも発揮した。
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2. 総合的なビジネス設計の必要性
──ビジネスを設計してから、開発、テストする
OMOで求められる「より便利な消費者体験」を創り出すには、アプリやUIといった、消費者が直接に触れる部分だけデザインしても困難である。いくらアプリが良くても、店舗内でのオペレーションとの連動や、スタッフの対応、システムとの連動が良くないと、消費者体験は良くならない。また、多数の店舗に導入するというスケール化を考えるとPDCAを回しても、サービスの均一化とは連動しない。