最初に到着した米ファイザー・独ビオンテック製のワクチンの使用期限切れが近づいている一方、接種が進まないためだ。香港衛生防護センターの元所長で政府のワクチン対策本部のメンバーでもあるトーマス・ツァンは、「9月をすぎれば接種できなくなる」と警告している。
地元のラジオ番組のインタビューに応えたツァンは、「接種会場の閉鎖時期は(9月末までと)決まっている」と述べ、市民に対し、接種を受けに行くよう呼び掛けた。現在あるワクチン以外に、香港が年内に新たに入手できるワクチンは「おそらくない」という。
ツァンはまた、世界の大半の国・地域が最も重症化リスクの高い人たちにもワクチンを提供できずにいる中で、香港が購入したワクチンを「ただ保管しているだけ」にしているのは「正しくない」と訴えている。
なぜ打ちたくない?
人口およそ750万人の香港は、それぞれ750万回分のファイザー・ビオンテック製と中国のシノバック・バイオテック(科興控股生物技術)製のワクチンを購入。ほぼ同数の英アストラゼネカ製ワクチンは、注文したもののキャンセルしている。
だが、十分な数が用意されており、16歳以上であれば誰でも無料で接種できるにもかかわらず、1回目の接種を受けた人は人口のおよそ20%だ。2回目の接種を受けた人は、わずか14%にとどまっている。
世界のその他の地域と比べ、アジア太平洋地域の大半は、接種に消極的であることが分かっている。ただ、香港の市民の間でワクチンに対する不信感と忌避がこれほど広がっている理由は、複数ある。
そのひとつは、市民の間に広がる政府への根深い不信感だ。また、パンデミックの比較的早い時期に感染拡大を抑え込むことに成功したことで、市民の間に気の緩みが広がっていることもあるだろう。