このIPOは香港市場において今年実施されるIPOとしては、2月の短編動画アプリKuaishou (快手)の54億ドルのIPOに次ぐ2番目の規模となる。JDロジスティクスの株式は5月28日に取引が開始される予定だ。
調査会社IHS Markitのアジア太平洋地域主任のラジブ・ビスワスは、「世界的なEコマースブームが国際物流の急成長を牽引してきたが、パンデミックはこの分野の成長をさらに加速させる」と述べている。
倉庫事業や宅配便事業を手掛けるJDロジスティクスは、中国のビリオネアのリチャード・リューが率いるJD.comから2017年に独立した。JDロジスティクスのIPOには、シンガポールの政府系ファンドのテマセクやブラックストーン、ソフトバンクグループのビジョンファンドなどが投資を行う。
孫正義が率いるソフトバンクグループは、物流や倉庫用ロボットを優先的な投資対象としている。
目論見書のデータによるとJDロジスティクスは、アリババとの競争や6年前に設立された新興企業Pinduoduo(拼多多)の成長にもかかわらず、中国のロジスティクス分野の売上規模で最大のプレーヤーとなっている。
JD.comは、中国の大手Eコマース企業の中で唯一、自社の物流部門を持つ企業としての地位を確保していると、ガートナーのシニア・ディレクターのサンディ・シェンは述べている。一方、アリババはロジスティクスをパートナー企業に依存している。
「JDの運営方法は他の企業とは異なっており、物流を自社でコントロールしている」と、シェンは分析する。目論見書によると、JDロジスティクスは独自のテクノロジーを用いて、Eコマースの顧客のために「冗長な流通層」を削減し、在庫管理を改善している。
一方で、JDのEコマースとロジスティクスは、海外からの政治的圧力により、中国市場に限定される可能性があると、テクノロジーと政治について執筆する作家のAbishur Prakashは述べている。インドやインドネシアの政府は、国内企業を繁栄させるために、海外のEコマース企業を抑制し始めているとPrakashは指摘する。
「JDにとって最大の課題は、米中の緊張の高まりの中で、どれだけグローバルに拡大できるかだ。新時代のロジスティクスを支えるのは、アルゴリズムとロボティクスであり、JDはどこに店を出しても中国の技術を "輸出 "することになる」と、Prakashは述べた。