「そもそもパレットレンタル業がどういうビジネスなのか、わかりにくいですよね」
物流現場で使用される荷役台、パレットを中心に、物流・輸送機器のレンタル事業を行うユーピーアール(以下、upr)は、東証二部上場から13カ月で時価総額を413%伸ばし、3年以内上場の企業のなかでその増加率が最も高い企業となった。同社は、物流業界の課題をテクノロジーで解決し、事業を広げている。
uprは旧社名「ウベパレットレンタルリーシング」の略称。その源流は、山口県宇部市の材木店にある。3代目の酒田義矢は、製造業に限界を感じていた。「パレットの製造は原材料費が8割。しかも製品を運ぶ運賃が高い。レンタルなら製品をつくらずとも、拠点を全国に拡大可能だと考えました」。1998年、酒田の社長就任とともに、製造業からシフトし、シェアリングをコアとした事業を展開していく。
しかし次なる課題に直面した。貸し出したパレットが相次いで紛失してしまうのだ。目をつけたのは、当時たまたま新聞で目にした「カラスの追跡調査」の記事だった。カラスのように、パレットの位置情報を追跡することを思いついたのだ。
早速、調査を行っていた東大の研究室に連絡。教授の紹介で東芝ロケーションインフォと協業し、倉庫内でも精度がよく、電池寿命が長い通信装置の開発に成功した。
2005年にはuprが同社を吸収することとなる。「東芝さんが子会社を売却しようとしていたので、当社の技術部門の人材として入ってもらいました。これがテクノロジー分野に進出する契機となったのです」
累計1万5000着以上を売り上げるアシストスーツも新聞記事が発端だった。重い荷物を運ぶ物流業界の職業病、腰痛を解決しようと、記事で見た介護用のロボットスーツを応用した。物流現場のニーズに合わせ、軽量で涼しく、安価なスーツが完成した。
企業を進化させ続けている要因は、ニュースをアイデアに転化できる感度だろう。ほかにもパレットの追跡技術を転用したカーシェアリング事業や、HACCP対応をIoTで一貫管理できるサービスなど、時代を先取りした事業を多く世に出している。
なぜアイデアは顧客に受け入れられたのか。「レンタル業の特性上、地域ごとに地道に顧客との接点をつくってきた。そうするうちに顧客からニーズを提案されるようになりました」。技術開発の根本にあるのは、対話だ。既存事業の深化と成長領域を身近なところで探索する「両利きの経営」の成功例といえるだろう。
ところで酒田は、パレットの稼働率から肌感覚で景気を読むことができるという。今後、パレットの追跡システムを広げ、国全体の経済動向がわかるまでにしたいと語る。「パレット指数」で景気を読む時代。実現はそう遠くないかもしれない。