フランスでは、2020年3月中旬から2カ月間のロックダウンでパリ店を休業。5月にテイクアウト営業から徐々に緩和していくと、6月には前年同月比109%を達成した。10月末から2カ月間にわたる2回目のロックダウン後は、今年1月、2月と過去最高売り上げを更新。さらに3月中旬から3度目のロックダウンでテイクアウトのみの時短営業となっていたが、この月も過去最高売り上げを更新した。
おむすび権米衛海外事業本部の谷古宇丈治本部長によると、当初は「甘いの?」「ソースはないの?」といった質問が多発するほど、おむすびの認知は薄かった。しかし、ヘルシーさや日本食人気の高まりもあって海外の人たちの日常に浸透してきている。
「海外3店舗とも売上はコロナ以前から右肩上がりでしたが、特にNJ店ではコロナの影響でその角度がぐっと上がりました」と谷古宇本部長。イートインの飲食店が営業を制限されるなか、おむすびはテイクアウトに強い業態であることが新規の常連客獲得につながったと見ている。
しかし、周囲にさまざまなテイクアウト店がある中で、なぜおむすび権米衛のおむすびは人気なのか。
日本のように「口中調味」の文化がないため、具材と“味付けがないごはん”を食べ進めやすいように、日本の店舗よりも1グラムだけ具材を多くするなど海外仕様に調整している(撮影:Kasono Takamura)
ひとつは、大きさと安さ。周囲のおむすび屋に比べてごはんの量が倍近くあるのに安価で、ハンバーガーなどおむすび以外のテイクアウト商品に比べても価格設定は手頃だ。「アメリカの日系レストランでは日本の価格の2〜3倍が主流ですが、私たちのおむすびは日本の約1.3倍。こちらの価格帯ではかなり安いです」(谷古宇本部長)。パリ店では、アメリカよりも高めで日本の約2倍だが、周囲の店に比べると3分の2ほどの価格でかなりリーズナブルだ。
そしてもうひとつは、米のおいしさだ。使っているのは、日本の契約農家が食味を重視して作った特別栽培米。おむすびの要である米の新鮮さを大切にし、冷蔵物流で輸出した玄米を現地の各店舗にて毎日精米している。
「日本人のお客様から『お米がおいしい』とお声がけいただくことが多いのですが、さまざまな人種の方からも同じくらいの頻度でお声がけいただけるようになってきました」と谷古宇本部長。パリ店では2020年5月から電気釜をガス釜に変更したことで食味が良くなり、新規の常連客が増えたという。