ビジネス

2021.05.17 07:00

世界のトップクリエイターに尋ねた「ビジネスにおけるクリエイティブ」の現在


──日本企業のダイバーシティを高めるには?

ダイバーシティは、何も国籍や性別だけを指すのではないと思います。企業全体を俯瞰して見たらすでにいろんなスキルをもった人がなかにいて、可視化されていないダイバーシティが存在している可能性もあります。でも、その人たちは点在しているだけ。これは日本企業に限らず、海外だってそうです。いま、どの業界にも閉塞感があるのは組織の細分化が進みすぎたから。多くの課題を突き詰めると「あそことあそこがコミュニケーションできていない」といった社内コミュニケーションに起因することが多いです。

大きな企業になればなるほど「決裁ラインが違う」といった具合に手順が増えてしまう。そんなバラバラな個や部門に横串を通してコミュニケーションできる仕組みが整えられれば、それだけでもっと組織の価値を引き出せて、新しい発想やクリエイティブが生まれると思うんです。

そもそも本来の「経営」はクリエイティブであるはず。何かの社会課題があり、それを解決するために起業したのだから。そういう意味ですべての会社の根っこはクリエイティブなのに、資本主義のなかで企業を成長させていこうとすると、その思いや力が失われていくというか、単に先にやらなきゃいけないことがたくさんあって後回しにされてしまうのかもしれません。それを失わせず、むしろ育み続けるためにCCOやクリエイティブパートナーが必要だと思っています。

──クリエイティブを取り戻す役割の人は、デザイン教育を受けている必要がありますか?

ないと思いますよ。僕も別に美大出身ではないですし。クリエイティブは「課題を解決するための力」と「それを形にするスキル」の掛け算。本質的に必要とされるアイデアを的確に判別する論理的判断力、良いアウトプットに慣れ親しんで必要なクオリティをはかれる審美眼があれば、本人が何かをデザインできる特別な力は必要ありません。領域を横断的に刺激する必要があるから、むしろコミュニケーションスキルや多様な対象に興味をもつ探究心が求められる気がします。


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かわむら・まさし◎WhateverCCO / Co-Founder。1979年、東京都生まれ。東北新社と共同出資で設立したWTFCのCCOも兼任。数々のブランドのグローバルキャンペーン、プロダクトやテレビ番組の開発など多方面で活動。Creativity誌による「世界のクリエイター50人」にも選出。
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文=神吉弘邦 写真=大中 啓

この記事は 「Forbes JAPAN No.080 2021年4月号(2021/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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