新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が起きた2020年、中国のエネルギー消費量は大幅に増えたが、世界全体の石炭使用量は減少した。中国の急速な経済成長と、石炭火力発電への大きな依存度により、2020年の世界全体での石炭による発電量は2015年比で0.8%減にとどまった。
他の国々を見てみると、日本は石炭火力発電所の建設を続けており、世界目標の達成に対する障害となっている。一方、オーストラリア、ドイツ、インドなど、石炭火力発電への依存度が大きな国では、炭鉱の閉鎖と再生可能エネルギーへの転換に向けた目標を設定し始めている。
米国の石炭消費量は2019年以降、急激に減少。同年は欧州での石炭脱却の始まりの年でもあった。鉄鋼業などの重工業ですら再生可能エネルギーに転換しつつあることが示唆されており、一部地域では環境汚染の状況が劇的に改善されている。
欧州各国の対応は想定以上に早く、ベルギー、オーストリア、スウェーデンはすでに、国内の石炭火力発電所を全て閉鎖。その途上にある国々や、石炭なしでも必要なエネルギーを長期に渡り賄えることを実証した国々もある。
しかし世界的に見ると、まだ問題は残っている。中国とインドの急速な発展により、世界全体の石炭火力発電量は2000年以降倍増し、2045ギガワットに達している。さらに現在建設中の石炭火力発電所による将来の発電量は200ギガワット、建設が計画されている発電所によるものも300ギガワット分がある。ただ、欧米での火力発電所の閉鎖により近く268ギガワット分が低減される見込みで、さらに213ギガワット分の減少見通しもある。
2014年以降、実際の石炭火力発電量は横ばい状態にある。つまり、建設された石炭火力発電所の稼働時間は以前よりも短く、得られる利益は想定よりも低くなっているということだ。石炭火力発電を行う80カ国のうち19カ国は、完全閉鎖の期日を具体的に定めている。
実際のところ、石炭火力発電は採算の取れない産業であり、大手投資ファンドのほか、アイルランドやノルウェーなどの政府系ファンドも撤退しているものの、われわれはこれからどうしても脱却できないようだ。先進国は長年にわたり石炭に頼りってきた(そして今も頼っている)が、だからと言って、発展途上国が同じことをしていい理由にはならない。世界の炭素排出削減目標を達成するためには、石炭火力発電を続けている国に対して非難や制裁、孤立化の措置をとる必要が、いつかは出てくるだろう。
石炭よりもかなり安価で土地をより有効に利用できるエネルギー源がすでに存在する今、石炭火力発電は直ちに中止すべきだという点で、科学界は一致している。石炭は時代遅れで有害なテクノロジーであり、とうの昔に見捨てられるべきだったものだ。私たちは何をためらっているのだろう?