米ファイザーや米モデルナ、英アストラゼネカ、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)などの製薬会社がもつ特許権が一時放棄されることになれば、ほかのメーカーも必要な情報を利用して自社でワクチンを製造できるようになり、全体のワクチン生産量が増えることが期待される。
だがファウチは3日、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、知的財産権を停止するという考え方については「わかりかねる」と断りつつ、ワクチンの投与を進めるうえで「最も迅速で効率的な方法」ではないかもしれないとの見解を示した。
ファウチはワクチンの供給量を増やす取り組みを支持する一方で、製薬会社に特許権を放棄させようとすれば長期にわたる法廷闘争に発展し、裏目に出るおそれもあると指摘。実際の停止まであまりに時間がかかるとすれば、「世界中でワクチン生産量を増やす方法はほかにもある」と述べている。
新型コロナのワクチンをめぐっては、豊かな国で大量の投与が進む半面、多くの貧しい国は入手まで何年も待たされる可能性が出ている。世界保健機関(WHO)が主導する国際的な共同購入・分配の取り組み「COVAX(コバックス)」は思うように進んでおらず、一段の対応を求める声が強まっている。インドや南アフリカをはじめとする新興国や途上国は、世界貿易機関(WTO)で知的財産権の保護義務を一時免除するよう求めている。
製薬会社側はこうした動きに強く反対している。特許がもたらす収入がなければ、巨額の費用を要するワクチンを開発・販売するインセンティブが薄れるとしているほか、ほかのメーカーが特許を利用できるようになっても、サプライチェーン(供給網)や、特許には含まれないより広範な技術的ノウハウなどの問題で、ワクチンをすぐに生産できるようになるとはかぎらないと主張している。