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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

2014年のSEMAショーに展示された改造フィット

今回は半分笑えて、半分眉をひそめそうな話題を取り上げよう。アメリカには、日本車に乗るエンスーを「ライス・ボーイ」(Rice Boy)と呼ぶステレオタイプな言い方がある。その言葉のニュアンスを聞いただけで、「アメリカ人が日本車を見下ろしている」ように感じるのも良くわかる。1970年代から1990年代まではそうだったらしい。

だけど、今は違うみたい。その歴史と理由を少し探ってみよう。

1970年代後半からは、デトロイトで生まれたアメリカ車の支持者たちの、急速に進化する日本のクルマに対する競争意識がだんだんと強くなった。日本人は良く米を食べるということで、アメリカ、特に西海岸あたりでは日本車に乗る人を「ライス・ボーイ」と呼ぶようになった。日本車と書いたけど、実はそんな人たちが乗る車両のほとんどはホンダ製のシビック、アコード、インテグラ、CRXなどだ。その通り、ライス・ボーイのほとんどがホンダの改造車に乗っている。

1972年のチューンド・ホンダ
1972年のチューンド・ホンダN600

なんで、ライス・ボーイがホンダ車を中心にいじるようになったかというと、70年代から90年代にかけて、アメリカのメディアではホンダ車の評価が高く、ルックスもスポーティで、値段も手頃。91年に導入されたV-TECエンジンの評判も良かった。だから、いじり甲斐があると思うようになった人が多い。

改造車と言っても、より大きめで派手なホイールやエキゾーストパイプ、リア・ウイングやフロント・スポイラー、それに車高を落とす、いわゆる「車高短(シャコタン)」にするような行為は、ライス・ボーイが良くやる改造方法だ。

つまり、こんな改造車に乗る人がすることは、クルマのエンジンをいじって加速性や最高速を上げるのではなく、派手な化粧パーツを採用することによって、クルマを速そうに見せること。ということで、少し不良っぽいイメージがあるのもおかしくない。

しかし、おかしなことに、「Rice Boy」の由来はそのステレオタイプとは違う。実は同じ70年代あたりから「RICE」は「Race Inspired Cosmetic Enhancement」、つまり直訳すると「レースカーからインスパイアされた化粧的な強化」という意味を持つのだ。簡単にいうと、レースカー風ドレスアップのことだ。

それ以降は、「このクルマはライス化された」と言ったら、日本車に限らず、ただドレスアップされたという意味になった。もちろん、シビックやアコードも「ライス化された」けど、実は化粧パーツでドレスアップされたフォード・マスタングやシボレー・コルベットなどに乗る人のことでも、ライス・ボーイと呼ぶ人もいた。

2015年のビシモト・チューンド・フィット
2015年のビシモト・チューンド・フィット

何を言いたいかというと、時間が経つにつれて「ライス・ボーイ」の本当の意味は変遷してきたけれど、結局、今、ライス・ボーイと言うと、ホンダの改造車に乗る人を示すようになった。でも最近は、韓国車もだいぶ売れようになって、アメリカ市場のなかで大きな存在になってきたので、韓国車を改造する人を「ライス・ボーイ」と呼ぶ人もいるようだ。

日本にも、僕の国オーストラリアにも当然、クルマをいじる人はたくさんいるけど、その多くは化粧的なパーツをつけると同時に、加速性を上げたりして性能も強化する人が多い。それがドレスアップのパーツしかつけないアメリカのライス・ボーイとは違う点だね。

クルマをドレスアップするのも良いけど、格好良くやって欲しい。意味のない派手なリアウィングをつけてもね……。格好良くドレスアップしてくれると、そのクルマたちを作ったカーメーカーも喜ぶし、次世代のデザイン・ヒントになるかもしれないからね。

文=ピーター・ライオン

ホンダ
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