ビジネス

2021.05.03 07:00

代替肉市場、寡占化がそれほど悪くない理由


植物性代替肉の人気が高まっているとはいっても、グッドフード・インスティテュート(GFI)のデータによれば、それが食肉市場全体に占める割合はわずか1.4%にすぎないのが現状だ。こうした状況を変えたいのであれば、比較的規模の大きい企業にスケールメリットを生かせる水準まで成長してもらわなくてはならない。

GFIのブルース・フリードリック事務局長は、ガーディアン紙でいみじくもこう述べている。「利益を出せるというのは仕様であってバグではない。それどころか、最も重要な仕様なのだ」。比較的規模の大きい企業が反トラスト訴訟などにさらされやすくなれば、業界全体の成長鈍化につながりかねない。それはいちばん望ましくないことだ。

問題が切迫しているのは、工業的畜産は人間の活動による世界の年間温室効果ガス排出量の14.5〜18%を占め、気候変動の大きな原因になっているからだ。また、工場式の畜産場は動物と人間にも多大な苦痛を与えている。毎年、世界で700億にのぼる陸上動物が人間によって残酷な仕方で飼育され、殺されている。飼育する人間のほうも、安くておいしい肉を生産するために過酷な条件のもとで働くことを強いられ、心身を病む人も少なくない。

わたしたちは、冷蔵庫の中から突きつけられているモラル危機に目を向けるべきだ。率直に言えば、工業型畜産を打倒するのに代替肉業界が独占に近い状態になることが必要なのであれば、そうさせるべきだ。

エズラ・クラインはニューヨーク・タイムズ紙に「工場畜産を終わらせなければ、近いうちに人間と地球にひどいことが起きるだろう。いや、それはすでに起こりつつある」と書いている。そのとおりだ。

心臓病やがん、糖尿病といった慢性疾患がアメリカで死亡や障害の主因でなくなり、気候変動が世界の差し迫った脅威でなくなり、動物や労働者に対する思いやりをもって行動する社会が実現したあかつきには、植物性食品分野の企業の構成という問題に取り組めるようになる(筆者は必ずしもそう思わないが、仮にそれでは遅すぎたとしても、なおそうする価値はあるだろう)。それまでは、1社もしくは数社に市場を支配させないということは、地球とそのすべての住民を救うのに比べればたいしたことではないのだ。

編集=江戸伸禎

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