世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

Next Meats Holdings, Inc. CEO白井良(右)、Next Meats Co., ltd. CEO佐々木英之

3年の研究開発の末、世界で勝負できる代替肉を世に送り出したネクストミーツ。米国法人CEOの白井良と日本法人CEOの佐々木英之が環境問題や食糧危機の解決に込めた強い決意とは。


環境問題への意識や健康志向の高まりから植物由来の代替肉マーケットがいま世界で急速に拡大している。

アメリカの代表的な代替肉ブランド「ビヨンド・ミート」は、アメリカのスーパーでは精肉売り場と同じ棚で販売されている。2019年には代替肉ブランドとして初のナスダック上場を果たした。グーグルやビル・ゲイツが出資する「インポッシブル・フーズ」は、総額1,400億円以上の資金調達を達成。企業評価額は4,000億円超といわれている。

植物ベースの食肉市場は2020年で43億ドルと推定され、2025年までに83億ドルに達すると予測されている。国内でも日本ハムやマルコメ、大塚食品など大手メーカーなどから大豆由来の代替肉を販売している。また最近では「焼肉ライク」で話題となった日本初の焼肉用代替肉「NEXTカルビ」「NEXTハラミ」が記憶に新しい。

この焼肉用代替肉をつくっているのが「ネクストミーツ」。「地球を終わらせない」をテーマに、代替肉の研究開発を行い、創業当初から世界のマーケットを意識してアメリカでSPAC上場を果たした。研究者や大手メーカーでもない、食品開発に携わったことのない白井良と佐々木英之が起業した日本発の代替肉スタートアップは、設立後わずか7カ月で上場初日の時価総額約4.52億ドル(約479億円)へと大化けした。そんな彼らの目指す未来とは。

日本の市場では遅すぎるだからアメリカでの上場を選んだ


「当初から日本の市場だけを考えていませんでした。米国での上場は最初から戦略的にやったことです」

米国法人CEOの白井良はこう語る。証券会社出身の白井にとって、日本では新規上場まで時間がかかり過ぎるという。N-3期からスタートし、利益を積み重ね、キャッシュフローを見て、といった純資産法の日本に対して、アメリカは、「完全にディスカウントキャッシュフロー」(白井)だ。未来に向けて価値があると予感させる企業に対しては、起業した時点でバリュエーションがつき、何百億となる事例がある。

「我々がやろうとしていることは急を要します。気候変動に対応するのに、5年後に上場し時価総額100億で20億集めた、では全然話にならない。初年度から何百億というバリュエーションをつけ、何十億かを調達しながら資産固めをしていき、その資産固めでさらにレバレッジをかけてバリュエーションを上げていく、という手法を取らないと。それを実現するのはアメリカの市場でしかない」

なぜそんなに急ぐのか。それはネクストミーツという会社が生まれたきっかけにもつながる。環境問題に対峙するビジネスを手がけたかった白井と日本法人CEOの佐々木英之は、当初エネルギー関係をメインに事業を検討したものの、ベンチャーで太刀打ちできるような事業規模ではなかった。そこで注目したのが代替肉だった。

「社会貢献ができるビジネスを作ることが2人の課題で、模索はずっとしていました。環境活動だけをやろうと思っても、何か影響を与えて世の中を変え得るまでのパワーはない。でもビジネスに乗せることで大きな推進力が起きる。ですから我々は利益ファーストではなくサスティナビリティファーストという考え方です」と佐々木は言う。

温室効果ガス、工場製畜産と呼ばれる育て方、フードロス、運搬によるCO2ロスといった環境問題や食糧危機を解決する手段の一つとして、代替肉に注目したのだ。



開発期間約3年。ほかにはないスピード感で世界へ


しかし、完成までには3年の時間を要した。何度も試作を重ねるが、代替肉として重要なテクスチャー、食感がうまく出ない。素材、熱、圧力など様々な点を改良しつつ、300回近くの試食を重ねたが、ゴールはなかなか見えなかった。その当時を白井はこう振り返る。

「暗闇で走っているようだった。バックグラウンドがない人間がやることで多分時間がかかっていると。1日作業して結果がダメだと、目の前が真っ暗になる。本当に悲しくなった」

それでも佐々木はポジティブにとらえていた。「僕は基本的に“なんとかなる”派なので、絶対にうまくいくと思っていました。だから彼が落ち込んでも、うまくそこをフォローしつつ、続けるようにしましたね」

白井がアイデアを出し、佐々木が動かす。芸術家肌の白井が落ち込めば鉄のメンタルの佐々木が支える。絶妙なコンビで試作を続け、やっと完成したネクストミーツの代替肉。納得のいくクオリティに到達してからの動きは速かった。アメリカ証券市場への参入、豊田通商とのパートナーシップ、台湾HOYAとの共同開発契約といった世界戦略。そして国内では2月からはOisix、3月には大手スーパーの食肉売り場での販売も始まる。

「すでに9カ国で準備を始め、3カ国で生産体制が整っています。僕らの目的が環境をなんとかしたい、という思いなので、日本だけ、アメリカだけではなく、世界でやらないと意味がない」(佐々木)

型破りのスピード感。これがネクストミーツの強みでもある。1回のミーティングで必ずなんらかの答えを出す。たくさんの「DO」を実行し、トライ&エラーを重ねる。たとえ相手が大手でも容赦なく迅速な対応を求める。持ち帰って検討はしない。必ずその場で解決、提案するようにしているという。

「でも、僕らはまだまだ遅いと思っていますね。地球環境は待ったなしの状況で、1秒でも速くやらなくてはならない。スピードを上げて事業化して価値を高める。このことでより地球環境の改善が早くなると信じています」(白井)


ネクストミーツは様々な企業や研究者とのオープンイノベーションを進めていくため、オンラインでアクセラレータプログラムを世界同時開催し、代替肉をつくる上で共創を展開している。ベンチャー企業主体のアクレラレータプログラムは異例のことだ。

次世代へ、そして愛する人へよりよい地球環境を残したい


地球環境をよりよくするために、寝る間も惜しんで事業のスピードを上げていく。そのモチベーションはどこから来るのか。

「次世代の子たちが未来に希望を持てない状態で大人になっていくのはかわいそうだという思いが原動力。我々の行動が何の役に立つのかわからないけれど、それを背中で示すのが大人の仕事ではないでしょうか。我々のような企業の銘柄がすごい勢いで株価を上げているのは、いわば期待値なのかと思っています」(白井)

「自分のためにとか、損得勘定ではなく、例えば自分の愛する人だったり、家族だったり。そういう相手に使える力は無限だと思っているので、『自分は何ができるのか、どうやって生きたらいいか』などを日々考えてほしいなと。我々は愚直にやっているけれど、皆さんにもやってほしいし、伝えていきたいと思いますね」(佐々木)

▶ネクストミーツ




白井良
しらい・りょう◎Next Meats Holdings, Inc. CEO。26歳のときに勤めていた大手証券会社を辞め、環境関連ビジネスで起業する。その後3度のバイアウトを経験し、佐々木と共にネクストミーツ創業。


佐々木英之
ささき・ひでゆき◎Next Meats Co., ltd. CEO。海外に目を向け中国の深センにて12年間、様々な事業に携わる。大企業向けのアクセラレータプログラムや、メディア運営などを経験したのち、白井と共にネクストミーツ創業。

Promoted by ネクストミーツ text by Rikako Ishizawa | photographs by Tomohisa Miyagawa

あなたにおすすめ