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Photo by Yuriko Nakao/Getty Images

ビヨンド・ミートとインポッシブル・フーズほど、短期間に圧倒的な地位を築いたブランドも少ないだろう。両社は過去5年かそこらで、ベジタリアン向けのニッチな商品だった植物由来の代替肉を、一気にメジャーな存在へ変えた。両社のパテなどの商品は、いまや大都市や大学町に限らずアメリカ中のスーパーマーケットの店頭に並んでおり、最近はバーガーキングやデルタコをはじめ、いくつかのファストフードチェーンのメニューにも採用されている。

両社のこうした駆け足の成功をめぐっては、植物性代替肉の分野で、長年のリーダーのモーニングスター・ファームズやガーデインもあわせて、ひと握りの企業が懸念すべきほどの力をもちつつある兆しだと警戒感を示す人もいる。だが、わたしたちにははたして、この段階でそれを心配するような余裕があるのだろうか。

現行のフードシステムを変えたいのであれば、まず現状を把握する必要がある。食肉加工業界では、上位4社のシェアが牛肉では73%、豚肉では67%、鶏肉でも54%にのぼると推定されている。数十年にわたってM&A(合併・買収)が繰り返されてきた結果、数社が業界を支配する体制になったわけだ。

食品業界での権力集中と戦うというのであれば、こうした、地球や人間の健康を脅かしている企業こそ相手にすべきであって、それを助けようとしている企業を標的にすべきではない。ブレイクスルー・インスティテュートのテッド・ノードハウスとダン・ブラウスティーンレジトは最近、フォーリン・ポリシー誌にこう書いている。

「アメリカの食料生産にかかわる社会問題や環境問題に対処するどんな取り組みも、まずこの現実を受け入れねばならない。それは、現代の豊かな経済国のフードシステムは、大規模で、集約的で、工業化され、技術を駆使したもの以外ありえないということだ。(中略)より良いフードシステムとはこうした恩恵にあずかるものであって、それと手を切るものではあるまい」

もっとも筆者も、少数の植物性代替肉メーカーによる市場支配を積極的にめざすべきだとまで言っているわけではない。この分野の価値を高めてくれている小規模の独立系ブランドはたくさんあるし、代替肉分野の競争はまだ最初期の段階である以上、今後そのどこかが追い抜くことだってありうる。それでもやはり、多様な植物性代替肉市場であってほしいという願望を、従来の食肉産業を打ち負かせるかもしれない代替肉の急速な普及よりも優先させるべきではない。

各社は資金へのアクセスや商品の販売をめぐって、より規模の大きいビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズと熾烈な競争を余儀なくされるだろうが、植物性代替肉が豊富にあり、手ごろな価格で入手できる世界で暮らせるようになるのなら、それは許容できる代償と言ってよいだろう。

編集=江戸伸禎

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