インドを襲う医療用酸素の圧倒的不足、供給より物流に問題

Ajay Aggarwal/Hindustan Times via Getty Images

新型コロナウイルスの変異株「B.1.617」が猛威を振るうインドでは、1日あたりの新規感染者数がおよそ1週間にわたって30数万人にのぼり、死者も急増、危機的な状況が続いている。

この「二重変異株」によって感染者が爆発的に増加する中、同国の医療現場はひっ迫しており、医療用品、特に医療用酸素の不足が致命的な影響をもたらしている。

重症化した新型コロナウイルス感染症の患者の多くには、医療用酸素の供給が欠かせない。明らかな症状の一つが息切れであることからもわかるとおり、この病気が肺の機能に影響を及ぼすためだ。

症状が進行すれば、患者は肺炎、そして肺水腫を起こす。そうした状態になり、肺から十分な空気を取り込むことができなくなれば、臓器系に酸素が行き渡らなくなり、臓器は正常に機能しなくなる。

増産には対応


インドのコングロマリット、イノックス・グループと米ペンシルベニア州アレンタウンに拠点を置くエア・プロダクツが合弁で設立した医療用ガス製造の国内大手の1社、イノックス・エア・プロダクツの常勤取締役、シッダールタ・ジェインによると、医療用酸素の不足が深刻な事態に陥っているのは、供給よりも物流に問題があるためだ。

イノックス・エア・プロダクツは数週間前から、それまで約1800トンだった1日あたりの生産量を同2300トンに増やしている。これは、国内の生産量である同7000トンのおよそ3分の1を占める量だ。また、仏エア・リキード(AirLiquide)と英リンデ(Linde)も、インド国内での供給量を増やしている。

だが、医療用ガスの工場は大半が東部に集中しており、ニューデリーやムンバイなどの主要都市からは、1600km以上離れている。ジェインは、「パンデミックが(意外にも)100年ぶり私たちを襲ったように、酸素の長距離輸送がこれほど必要になるとは、誰も予想していなかった」「そのため、インフラが構築されていなかった」と説明する。
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記事=Katie Jennings & Aayushi Pratap 編集=木内涼子

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