理不尽を「リスペクト」で駆逐せよ 制作現場を変えるNetflixの本気

制作関係者全員が対象の「リスペクト・トレーニング」


業務上必要な指導とハラスメントの違いについて、現場で迷ったり、そんな場面を目撃したりしたことはないか? という講師の問いかけには、ある参加者から「(この現場ではないが)とある監督が、何が悪かったのかを演者に伝えないまま、40テイクも同じシーンを撮っているのを目撃して疑問に思った。作品のクオリティに対して責任を負っているのは監督だが、これは(パワハラと)紙一重と感じることも。ただ、声を上げにくい(状況がある)」という意見が出た。
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さらに講師は、はっきり「アウト」とは言い切れない行動例を挙げ、「この場合はどう思うか?」と参加者に意見を求めていった。

そのなかで印象的だったのは、「一緒に働いている人をあだ名で呼ぶのはハラスメントになるか?」というテーマだ。

ある参加者が、「自分はあだ名で呼ぶのはハラスメントではないと思う」と発言すると、別の参加者も「ハゲとデブとか、人を馬鹿にするような呼び方はダメだと思う。普通に仲良くなる呼び方だったらいい」と続けた。
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さらに別の参加者は、「俳優部はスタッフの名前を覚えてコミュニケーションをとるときに、あだ名を使わざるを得ない部分もある」と指摘。「例えばその人がパンキッシュな風貌だったら『パンク君』って呼んだりもするけど、それはその人の特徴をインプットするための努力。ディスるのはよくないけど、『えーっとキミ、名前はなんだっけ?』とそこで立ちどまってしまうより、その場の流れでパンク君って呼んでしまったほうが円滑にいく場合がある」と意見すると、会場は共感の空気に包まれた。

その後もさまざまなトピックについての意見が交わされたが、講師の田中さんは、何度も「ここは答えを出す場ではない。一緒に考えるきっかけにしてほしい」と繰り返していた。

「大事なのは、その行動や言葉に相手への『リスペクト』が入っているかどうか。この業界でのやり方や、いままでの当たり前を頭ごなしに否定するのではなくて、他のやり方がないのか、ちょっと立ち止まってみること。パワハラを見つけて糾弾するのではなく、『その行動ってリスペクトが足りなくない?』と気づかせてあげること。それが大切です」(田中さん)

現場に立つ「サンクチュアリ -聖域-」プロデューサーの藤田大輔さんも、「『リスペクト』という言葉が拠り所になるかもしれない」と話す。

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藤田大輔プロデューサー

「僕らの仕事って、作品に対してそれぞれのスタッフが情熱を注いでいくもので、その熱量がゆえに、ぶつかることも多いんです。時には、監督やリーダーたちが独善的にならないと、物事が進まなくなる瞬間も。そこの線引きがとても難しい現場なので、『リスペクト』というキーワードがみんなの意識をまとめる助けになると思う」
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文=松崎美和子 写真=曽川拓哉

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