「漫画」をきっかけに古典の世界が開くことも──
坪田:最近は漫画で名著を読む人が増えましたよね。以前に、僕の元教え子、「ビリギャル」のさやかちゃんが教育に興味を持ち始めて大学院に通い始めたときに、ルソーの『エミール』をすすめました。この本はもともと、幼稚園の園長をしている僕の母が、「教育を生業にしようとしているなら、せめて『エミール』は読みなさい」と僕にすすめてくれた本です。
坪田氏の著書、累計発行120万部突破のヒットセラー『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』
『エミール』は「子ども」を発見したと言われていますが、この感覚は僕らにはないですよね。当時、子どもは大人の小さいバージョンだと考えられていました。しかし実際、そういう考えの大人は今の世の中でもたくさんいます。「なんでこんなこともできないの」と、親は子どもに伝えがちです。対して、子どもは大人とは別の存在なんだということを最初に発見したのがルソー。しかも『社会契約論』の著者として世界史にも出てきたルソーがこれだけ教育について語っているのが驚きでした。
さやかちゃんに『エミール』をすすめると、「難しすぎて読めない!」と言われてしまい、それならと漫画バージョンで読んでもらうことにしました。子どももそうですが、読書までのハードルが高すぎて、漫画など簡単なものに行ってしまいがちです。描写が全部絵になっていれば、文字で読解しなくて済みますから。
『エミール(上)』(岩波文庫)/『エミール(まんがで読破)』(イースト・プレス刊)
堀内:たしかに『漫画で読む〇〇』という本は最近多いですね。僕もよく買って読んでいるんですよ。
坪田:堀内さんでもですか!?
堀内:難しい本を読むと、誰でも頭がどんどん混乱してきてしまいます。漫画でさらっと読んでおき、だいたいの感じを頭に入れて整理しておかないと「海」に溺れてしまいますから。
坪田:日本の知の領域で最高峰にいる堀内さんがそうおっしゃるならば、まずは漫画でさらっと読んでみるのは悪いことではないんですね。
堀内:本は自分の実力に応じて、だんだん変えていけばいいし、ゆっくり読んで行くべきではないでしょうか。そうこうするうちに本当に好きな本が見つかったら何度も読み返せばいいですし、最後は原著を読むのもおすすめです。いきなり「難しい本をちゃんと読みなさい」と言われてもそれは無理過ぎるというもので、本嫌いになってしまう可能性もあります。