3. 「日本人初」を達成したこと
テニスで2011年に全仏オープンを制した中国の李娜や、2018年全米オープンで優勝した大阪なおみら、アジア系選手が国際スポーツ大会で偉業を達成した例は他にもある。そうした中でも、松山の優勝は、世界で多くのファンを抱えるプロゴルフ界においてアジア系男性が達成した史上最高の勝利となったと言えるだろう。
世界の多くで多様性が重要視されている今、松山の今回の偉業は重要なものであり、マーケティング効果が非常に高い。
4. 日本は今も世界の重要市場
大前研一は1985年、日米欧の「トライアド・パワー」3地域が世界経済の軸となるとした。日本は以降、経済大国であり続けてきた。中国を筆頭にほかの多くの国・地域が躍進する現在、大前が掲げた3地域のモデルはもはや時代遅れだが、日本は今も世界市場で重要なプレーヤーだ。国際的な大企業は、日本市場に注目する必要がある。
松山の英語力がスポンサー契約の障壁になるという見方もあるが、世界でのマーケティングにおける日本の地位を考えると、この問題はそれほど重要ではない。もちろん、松山がこれから英語力の向上を目指す可能性はあるだろう。だがそうではなかったとしても、世界を相手にする企業は複数の市場からメガスターを広告塔として起用するべきであり、特に日本のように大きな市場についてはなおさらだ。日本で大きな影響力を持つ松山を、他市場での広告に登場するチームの一員とすれば、ライセンス契約は特に魅力が増すかもしれない。
松山はほかの一部のトップ選手と異なり、今年の東京五輪に出場する可能性を除外していない。松山が五輪に出場すれば、勝ち負けにかかわらず、大きな注目を集めることになる。ただ晴れて金メダルを獲得すれば、松山の株は天文学的なレベルにまで上がるだろう。スポンサー契約を考えている企業はこれを考えるべきだ。