トヨタが採用した自動運転ソフトの開発基盤「Apex.OS」の実力

(C)APEX.AI

ここ10年ほどの間に、何百もの企業が自動運転システム(ADS)のゴールドラッシュに飛び乗ろうとした。その中で、ADSに取り組む足がかりとなったツールの1つが、オープンソースのロボットオペレーティングシステムである「ROS」だった。

ROSは開発に適したプラットフォームではあるが、車両制御システムのような安全性が重視される環境で使用するには、多くの重要な機能が欠けていた。その機能を補うために開発されたフレームワーク「Apex.OS」をトヨタが採用し、自動運転ソフトの開発を効率化しようとしている。

Apex.OSの開発元の「Apex.AI」は、ROSベースのソフトウェア開発に従事してきたCEOのJan BeckerとCTOのDejan Pangercicの二人が立ち上げた会社だ。2017年創業のApex.AIは、4年間をかけてApex.OSを進化させてきた。

Apex.AIのソリューションを使えば、開発者はオープンソースのROSを使ってプロジェクトを開始し、プログラムの準備が整えば、そのアプリケーションをそのままApex.OSに乗せることが可能だ。ROSはロボットシステム用の汎用プラットフォームとして開発されたため、信頼性の高いリアルタイム制御システムに必要な機能の一部が欠けている。Apex.AIのチームは、ROSの基本的なコードとライブラリを書き直し、安全性を確保した。

コードやライブラリの書き換えの結果、Apex.OSは自動車の機能安全規格「ISO 26262」で要求される最高レベルの「ASIL-D」の認証を獲得した。ASIL-Dは、量産車に使用しても安全であることが確認されたことを意味している。

Apex.AIは4月14日、トヨタグループでソフトウエアやスマートシティー開発を手掛けるウーブン・プラネット・グループ(Woven Planet Group)との提携を発表した。ウーブン・プラネットは、すでにApex.OSを利用しており、今後はウーブンのソフトウエア開発環境のArene(アリーン)にApex.OSを統合して自動運転ソフトウエアを開発していく。

トヨタはビークルOSと呼ばれる車載ソフト基盤のアリーンOS(Arene OS)を開発し、モビリティ関連のアプリ開発を効率化しようとしている。

Apex.AIは、トヨタのウーブン・プラネットに加えて、日本のモビリティ関連のスタートアップの「Tier IV(ティアフォー)」とも提携した。Tier IVは、自動運転向けオープンソースソフトウエア「Autoware」を開発しており、同社のソフトウェアとApex.OSを組み合わせることで、迅速な開発を可能にしようとしている。

編集=上田裕資

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