若者が社会に対して感じるモヤモヤについて、第一線で活躍する人や専門家にぶつけて、より良いヒントを探る連載「U30と考えるソーシャルグッド」。今回は、働き方改革のコンサルティング企業「ワーク・ライフバランス」の社長である小室淑恵さんに、大学生を中心に活動するNO YOUTH NO JAPANのメンバーが、官僚や国会議員のブラックな働き方に対する疑問をぶつける。
(前回の記事:オンライン授業で味わった孤立感 大学教育の未来は?)
これから就職をする私たちにとって、不安を感じる日本の働き方。少子化にもつながる日本人のブラックな働き方を改善するにはどうしたらいいのか──。
官僚が「例外的な」働き方になる背景
NO YOUTH NO JAPAN 和倉莉央(以下、NYNJ和倉):政府のデジタル化が推進されるなかで、官僚のブラックな働き方が話題になりました。日本全体では働き方改革が進んでいるように感じますが、官僚の方々の働く現状はどうなんでしょうか。
小室淑恵(以下、小室):まず、日本全体の働き方改革は自然に進んだわけではありません。2019年に働き方改革関連法案の労働基準法(以下、労基法)が改正されました。それまでは明確な労働時間の上限がなく、各企業と従業員の間で労働時間の上限の取り決めをしていました。月200時間の残業を許している現状に危機感をもち、株式会社ワーク・ライフバランスを起業してから15年、少子化も続く中でやっと政府も働き方改革へ舵を切り始めました。
しかし、労基法のもとで働いていない官僚にこの改正は適用されていないのです。国家公務員法では上限規定がなく、残業代が正確に支払われていません。河野大臣が今年1月に残業代をしっかり払うよう訴えましたが、まだ3割は払われていない状況です。このように今は、官僚を守る法律がありません。2019年度の内閣府人事局の調査では、特に若手官僚の離職率が6年前の4倍超と深刻な状況です。
NYNJ和倉:なぜ国家公務員は労基法で別扱いなのですか?
小室:国家公務員だけではなく、医療や建設業、運輸業で働く人なども労基法で別扱いされています。これらの職業は、緊急事態に対応する必要があるという特別な扱いでした。患者が運ばれてきたら命を救わないといけない応召義務のある医療関係者のように、国家公務員も国のために緊急時に働かないといけないというような理由から別の扱いをされてきたのです。
こういう例外的な働き方によって、優秀な人が国家公務員になりたがらなくなっている。でも国の重要な機関に人がいかなくなる国って未来がないですよね。