ビジネス

2021.04.25 18:00

ガーナで人生が変わった。22歳がカカオビジネスを変える


リスクのあるビジネスモデルがゆえに、これまで大手の商社が足を踏み入れてこられなかったのだ。田口も、「全体像を知っていたらこんなに気軽に行動できなかった」と振り返る。

何も知らずに現地に行き、農家の苦しみ知り、日本ではショコラティエの不満を聞いた。現地での繋がりを頼りにココボードの人を紹介してもらい、カカオ専門商社と出会い、点と点が繋がって、形になっていったのだ。田口の熱意と行動力によって、政府のシステムを変えることなく、農家の努力に利益を還元する仕組みを実現できた。

挑戦はまだ始まったばかり


2020年8月、コロナ禍中に日本でできることはないか考え、ガーナにチョコレート工場をつくるためのクラウドファンディング行った。すると、開始翌日に目標の100万円を集め、1カ月と少しの期間で400万円以上の支援を達成することができた。

今年1月には、「MAAHA」というチョコレートブランドを立ち上げた。MAAHAは現地の挨拶の言葉。ガーナの人々の声が聞こえて、明るくて素敵な様子が伝わるようなブランドにしたいと名付けた。MAAHAではチョコレートを通してガーナの課題と魅力をシェアしていきたいと考えている。ガーナの人々の翻訳者となることで「貧しくてかわいそう」というイメージを変え、「こんなにかっこいい人たちが作っているんだ」というポジティブな印象を拡げていきたいという。



クラウドファンディングの評判もあり、すぐに百貨店から、「取り組みを応援したいから買取で良いから取り扱わせて欲しい」と連絡をもらった。まだ工房もできていなかったため、急遽自宅の物置を改装して保健所の許可を取り、ショコラティエと2人でチョコレート製造を開始した。

田口が一緒に生産したガーナのカカオから作られたチョコレートは、シンプルな味わいの中にしっかりとしたカカオの風味が広がる。最初は数種類の板チョコと「ガトーショコラ」のラインナップだったが、現在はクッキーや季節限定フレーバーなども製造・販売している。



現在22歳の田口は、「将来的にはカカオの輸出量を増やして、ガーナ中にシステムを拡げ、その先にカカオを使った二次産業・三次産業を繋げていきたい」と展望を語る。

カカオの輸出には重い税が課されるが、カカオニブやチョコレートのような加工品には税金がかからない。より還元率の高い製品に現地で加工することでガーナをより豊かにできる。そのために現地にチョコレート工場を建設し、いまは低賃金で日用品を作るしかない女性たちに新しい雇用も創出していきたいと意気込む。

この5月にはガーナに戻り、いよいよカカオの本格的な輸出を開始する。Mpraesoの挑戦はまだまだ始まったばかりだが、「大好きなチョコレートのことをもっと知りたい」という田口の純粋な好奇心から始まった取り組みがガーナに大きな変革をもたらす日もそう遠くないだろう。

連載:ゼロイチの創り方を考える
過去記事はこちら>>

文・写真=入澤諒

ForbesBrandVoice

人気記事