同社は「小江戸巡回バス」を1995年から運行し、97年にはディーゼル型ボンネットバスを導入。江戸時代の城下町の姿が現存する「小江戸」の成長を牽引してきた。
「日本初」というめずらしさから電気バスそのものに目が行きがちだが、注目すべきは同社の狙いだ。社長の谷島賢は、「川越を国際的な観光都市に発展させるプロジェクトの一環。企画から運行開始まで2年半をかけました」と話す。
中国製の電気バスに独自の改造を加え、1台あたり4500万円を投入。排ガスゼロで静粛性に優れるという環境面だけでなく、クラシックなデザインに仕上げて、川越の「蔵の街並み」と調和させた。さらに、エンターテインメント機能として照明も取り入れ、夜は車体下とボンネットフード内をライトアップして街並みを彩る。
「新しい技術を取り入れて、サービス向上することがひとつの狙いです」。また谷島は、「いまのバス業界をいかに支えていくかという実験でもあるんです」という。日本のバス業界は、少子高齢化に伴い運転手の人材不足が続いている。
「ただでさえ人数が少ない運転手さんが、この先どんどん定年退職していけば、公共交通を支えられなくなります。自動運転の実現はまだ先の話。それまでを『つなぐ』役割が必要なんです」
導入した電気バスは完全オートマチック仕様。ギアチェンジの操作が不要で、長時間運転の負担が大幅に軽減される。さらに、安全装置として衝突防止システムも搭載した。
「これなら高齢の運転手さんが、もう少し定年延長して続けられるかもしれない。川越の観光もバス業界も厳しい状況が続いていますが、その両面で新しい電気バスが果たす役割は大きいんです」
やじま・まさる◎1954年、埼玉県生まれ。78年成蹊大学法学部卒業後、東急観光に入社。81年にイーグルバス入社。2000年より現職。英ウェールズ大学でMBA、埼玉大学で理学工学博士。「SMALL GIANTS AWARD 2018」でローカルヒーロー賞を受賞。