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今のところ最良のシステムとされている資本主義には、貧富の差を広げるという大きな問題点がある。

そんな資本主義を正しい役割に立ち返らせるべきだと説くのは、欧州を代表する経営哲学者であり、イギリスのピーター・ドラッカーとも言われるチャールズ・ハンディだ。彼の普遍的な人生哲学をまとめた『THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方』より、資本主義のあるべきまっとうな姿について紹介する。

※本稿は『THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方』(かんき出版)より一部抜粋・編集したものです


資本主義のあるべき姿


資本主義は残念ながら、利己主義をまっとうな美徳としてしまった。誰もが自分の面倒を自分で見れば、世界はよくなるとしたのだ。

その結果、たしかに貧しい人の数は減り、赤ん坊の生存率は向上し、多くの国が以前にも増して裕福になりつつあるようだが、いまだどこに暮らす誰もが不幸なままである。

とりわけほとんどの富裕国がそうだ。資本主義は富める者をさらに裕福にはしたが、貧しい人はほとんど恩恵を受けておらず、富める者と貧しい者の格差を広げただけだ。

では、資本主義を正しい役割に立ち返らせるとしよう。

資本主義とは本来、生きる手段の提示を目的としたひとつの考え方であり、必ずしも生きる意味となるものではない。こうして定義を再確認すると、よく聞かれる資本主義に対する批判は鳴りを潜めるのではないか。その批判とは次のようなものだ。

「共産主義には万人に通用する大義(貧困からの解放、労働の確保、住宅の保障など)はあっても、それを提供するメカニズムがないが、資本主義にはメカニズムはあっても、その大義はごく少数にしか通用しない」

定義をあらためて見ると、資本主義はメカニズムにすぎないことがよくわかる。そこに大義はなく、大義は各自で決めればいい。資本主義は人を解放する教義であって、人を決定づけるものではない。お金が手段であって目的でないのと同じだ。

資本主義はしょせん道具である


アメリカの神学者で哲学者でもあるマイケル・ノバクは、ビジネスとモラルについて説得力のある論旨を巧みに展開し、その2つが両立しえないことはないと語る。

彼は著書『使命としてのビジネス(Business as a Calling)』(未邦訳)で、すでに考案されているほかの選択肢よりも資本主義が好ましいとする理由を、現実に即して次のように説明している。

1. 資本主義は貧者が貧困から抜け出す一助となる。当然ながら、全員は抜け出せないが、アメリカ社会の最底辺レベルであっても多数の変化が見受けられる。そのレベルに永遠にはとどまらず、なかには1年で抜け出す人もいる。失業者数は特定の時点の断片であり、たとえ1年後も同じ割合だったとしても、構成する人まで同じではない。

「誰もが裕福になれる」というアメリカンドリームはいまも健在だが、北朝鮮やキューバなど経済が低迷する国となるとそうはいかない。ソ連には、ほかの国々をひとまとめにしてもかなわない数の科学者や技術の専門家がいたが、それだけの知能があっても国民は裕福にならなかった。

『THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方』(かんき出版)

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