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2021.04.05 07:00

絶滅危惧の技術が市場を無限に!オキサイドが世界シェアNo.1をつかんだ「日本の光」


技術のプロは経営のど素人


ただ、古川は光学単結晶のことはわかるが経営のことはわからない。

「見積もりも書いたことないですし、経理も営業も人事も、ましてや株のことなんてさっぱり」

大手商社が出資を決め、山梨県小淵沢町にある結晶製造装置の製造会社が装置を融通し、社屋も間借りさせてくれることになり、古川ら創業メンバーcは技術を提供することで、それぞれ持ち株比率を3分の1ずつにするという3本の矢構想が固まった。

設立記念パーティの前日、商社が「持ち株比率が51%以上でないと出資できない」と告げてきた。

「その商社のために働くことになってしまうのかなと。でも、他の人が『古川さん、それは絶対ダメだよ』とアドバイスしてくれて」

結局、商社は降りて製造会社がオキサイドの親会社となった。しかしほどなくこの親会社の経営が傾いてしまい、古川は新しい株主、そして社屋の移転先探しに奔走した。

「技術なら、うまくいかなくても何とか自分たちで解決できるじゃないですか。でも、こういう問題ってなかなか解決できないんです」

ようやく新たな株主を探し出し、新社屋は川沿いに見つけた廃工場に移した。2005年のことだ。そのころには、いま、ブルーレイと呼ばれている光学ディスク用光源を巡る青色半導体レーザーとの勝負は決していた。


オキサイドが本社を置く山梨県北杜市。会社の横には、日本三急流の一つである富士川へと続く釜無川が流れる。山梨は国内有数の水晶の産地であり、単結晶との親和性は高い。

すでにNIMSを退職していた古川に戻る場所はなかった。

「起業して3年たったとき、研究所に戻るかという話がありましたが、もう従業員がいたので『はい、さよなら』とはいかなかったんです。それに、大変だけれど、研究所よりこっちのほうが面白い、動いているなという感じがありました。合っていたんですね」

市場はなくても技術はある。それを知る企業から開発の委託が続いた。NTTからは、光ファイバー通信用にと約半世紀前にIBMが生んだ光学単結晶の品質向上を託された。

その結晶の性能は抜群だ。しかし、製造が難しく、大手企業は小指の爪の先ほどの大きさのものしかつくれずにいた。しかし2007年、オキサイドは手のひらサイズの、しかも高品質な結晶の製造に成功。NTTの子会社と資本提携をしたのを機に経営が上向く。元の親会社があるからと選んだ土地も助けてくれていた。
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文=片瀬京子 写真= 佐々木 康 ヘアメイク=内藤 歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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