起業家がスターシェフに聞く、東京と仕事とレストランビジネス

ダニエル・カルバート(左)と岩瀬大輔(右)

世界有数の美食の街として知られる東京だが、ミシュランガイドに載る店も、その他ランキングに入る店も、ほとんどが日本人シェフの店。実は、「東京で大活躍する外国人シェフ」は指折り数えるほどしかいない。

そのフードシーンに「香港からフランス料理のスターシェフがくる」──昨年末、いち早くそう教えてくれたのは、数年前から香港を拠点のひとつとする起業家でスパイラルキャピタル マネージングパートナーの岩瀬大輔。聞けば、旅や食事を共にする仲だという。

英国出身のダニエル・カルバート、33歳。ニューヨークとパリの3つ星店で腕をふるったのち、香港でヘッドシェフを努めた店は、わずか数年でミシュラン1つ星を獲得。さらに2020年の「アジアのベストレストラン50」で4位という快挙を成し遂げた。6月から、フォーシーズンズホテル丸の内東京にオープンする「Sézanne(セザン)」を率いる予定だ。

「数年前から東京に来たいと思っていた」という念願の街で、彼はどんな挑戦をするのだろうか。彼のキャリアもよく知る岩瀬が聞いた。


──昨年11月から日本に住むことになって、なにかサプライズはありましたか?

日本にはよく来ていたのでそういうのはないですね。でも住むのは初めてで、家に入居するまでが予想以上に大変でした。銀行口座や日本の携帯を手に入れるのにも時間がかかりましたね。それに、日本語がわからず、洗濯機のボタンは何が何なのか……SNSに写真を投稿して、友達に助けを求めました(笑)。

──神楽坂で一軒家に住むと決めたようですが、その理由は?

香港では5年間、いわゆるマンションに住んでいました。香港ではみんなそうだし、僕はその前のパリでも、さらに前のニューヨークでもそうでした。マンションは便利で快適なんですが、このタイミングで日本にやってきて、とても日本らしい暮らしがしたいと思ったんです。

神楽坂にはいまだに昔ながらの豆腐屋があったりします。近所に豆腐だけ売っているお店があるなんて素晴らしい文化です。もし高層マンションが立ち並ぶエリアに住んでいたら、こういうことに気づかないかもしれない。



──日本の政府はエキスパートの受け入れに力を入れていて、香港のような“金融ハブ”にしたいという話もありますが、ダニエルのように日本語に慣れないエキスパートにとって、東京はどう映りますか?

5年前に初めて日本に来たときよりは格段に良くなっていると思いますね。ライフスタイルが進化したというか、地下鉄も番号表示で便利になったのは大きいですね。ただ、日本人の友達はそれがわからないみたいで、皮肉だなとも感じました(笑)。
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編集=鈴木奈央 写真=小田駿一

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