小学生作家がオードリー・タンに聞いた「トランスジェンダーと多様性」

2018年、絵本『しょうがっこうがだいすき』が出版され、10万部を超えるベストセラーとなった。作者は、秋元うい。執筆当時小学2年生、これから小学生になるみんなに学校の楽しさを教えてあげたいという想いから筆を取ったという。

現在10歳になったういが次に興味を持ったのは、トランスジェンダー。夏の自由研究や当事者へのインタビューをもとに小冊子『小学生の私たちが知っているだけで、せかいを変えることができる。』を自費出版した。トランスジェンダーといえば、新型コロナウイルスの封じ込めで脚光を浴びた台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タンがカミングアウトしていることで知られている。ういが是非取材をしたいとインタビューをオファーしたところ、OKの返事をもらった。

3月半ば、Forbes JAPANオフィスでういとオードリー・タン大臣の対談が実現。「オードリーの由来は?」「カミングアウトできたのはなぜ?」──10歳の作家ならではの質問に、大臣が丁寧に答えた。



虹とトランスジェンダー


秋元うい(以下、うい):こんにちは。私は現在10歳で、『しょうがっこうがだいすき』という本を書いた秋元ういと申します。

オードリー・タン(以下、オードリー):昨日ういちゃんが書いた本を読ませてもらいました。自分の意見や考えがはっきりと書かれていて、とても印象に残りました。

うい:実は、あるきっかけを通してトランスジェンダーに関心を持ったのですが、テレビや他の媒体を通しても、トランスジェンダーの情報がなかなか手に入りませんでした。そして、特に小学生がトランスジェンダーのことを理解できる本が少ないので、自分でも書いてみたいと思うようになりました。

オードリー:ういちゃんは意外に思うかもしれませんが、実はトランスジェンダーの人たちは世界中にたくさんいるんですよ。たとえば、虹は一つの国から見えるのではなく、世界各国どの国からも見ることができますよね。世界中から虹が見える現象と同じように、トランスジェンダーの人たちも世界各国に存在しているんです。

うい:オードリーさんは、男性であった時代に、自分が男性であることに特に何か強く感じたことはありましたか?

オードリー:もちろん、生理的には男性でしたが、だからと言って自分が特に男性だと意識したことはなくて、同じように女性になったからと言って、特に自分が女性だという意識も持っていないんです。そうした表に出てくる現象だけで自分の性が何なのかを決めるわけではないのです。

うい:女性になったときの気持ちは、どうでしたか?

オードリー:先ほども言いましたが、これはまさにダイバーシティ(多様性)の問題で、強いて言うなら、女性になってからは、自分の中に特に女性が持つ特有の感情が生まれてきたのではないかと思っています。たとえば、他の人たちの感情を組み入れる能力が増し、感情の認知度が豊かになった気がします。そして、繊細な気遣いを持つことで、もっとニュアンスを含んだ人間関係を築くことができるようになりました。でも、だからと言って特に自分が女性であることを意識しているわけではありません。
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文=賀陽輝代 構成・編集=谷本有香

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