小学生作家がオードリー・タンに聞いた「トランスジェンダーと多様性」


コンピューターが持つ「無性」に居心地の良さを感じた


うい:いつ頃から自分の本質は女性かもしれないと気付いたのでしょうか?

オードリー:最初に「もしかしたら?」と思ったのは、「男ならこうするべきだ」という周囲の期待に応えられない自分に気付いたときです。それと、12歳で初めてコンピューターと出会ったとき、男女の性別に関係ないところで動くコンピューターが持つ「無性」あるいは「両性」の要素に居心地の良さを感じたんです。

うい:なぜ、オードリーという名前を思いついたのでしょうか? オードリーという名前には何か特別な意味があるのでしょうか?

オードリー:オードリーの漢字名は「不死鳥」で、英語では「フェニックス」と言います。それは二つの性に分けられない言葉なんです。女性的な言葉の横にあると、男性的に映るし、逆に「竜」のような非常に男性的な漢字の横にあると女性的になる。性別が流動的で固まっていないし、特に性別を意識させないんですね。

あるとき、日本の友人からフェニックスは漢字で「鳳」と書いて、「おおとり」と発音すると聞いたことがあって、それが「オードリー」という発音と似ていたので、「オードリー」という名前を選びました。



うい:なぜ自分がトランスジェンダーだとカミングアウトする勇気を持つことができたのでしょうか?

オードリー:それは、ひとえに自分の周りに素晴らしいコミュニティーがあったからだと思います。最初に自分で会社を立ち上げたときも、職場の仲間が皆カミングアウトの経験を持つLGBTQIの人たちだったんです。彼らができるのなら自分にもできるはずと思わせてくれる「安全な場」と「サポートする仲間」の存在が大きかったですね。

うい:「普通(ノーマル)」とか「当たり前」という言葉は、その逆の仲間外れを作ってしまうのではないかと思いますが、オードリーさんは「ノーマル」の意味をどのようにお考えですか?

オードリー:台湾のパブリックセクターは男女の比率が3分の1というのが普通だったのですが、だんだん女性の比率を40%にするのが普通になり、現在は42%が女性という状況です。何が普通であるかは社会やコミュニティーの動きによって決められるのです。

ただ、コミュニティーの中にも色々な人たちがいるので、その概念をそのまま当てはめることはできません。たとえば虹には赤が含まれているけれど、「赤」と限定することはできません。虹は様々な色が入り混じった「マルティカラー」という表現をした方が理に叶っていますね。
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文=賀陽輝代 構成・編集=谷本有香

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