朝日新聞外交専門記者

米国のブリンケン国務長官(左)とオースティン国防長官(中央)(Photo by Kiyoshi Ota/Bloomberg/Pool/Anadolu Agency via Getty Images)

米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が15日から日本と韓国を歴訪した。日米と米韓で、外交・防衛閣僚による安全保障協議(2プラス2)を行い、それぞれ共同声明を出した。

ブリンケン長官は帰途、米アラスカ州アンカレジでサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と共に、中国の楊潔篪共産党政治局員、王毅国務委員兼外相との外交トップ会談に臨んだ。ブリンケン氏は、日中韓の考え方や置かれた事情を良く理解した老獪な手法を見せつけた。米国での勤務経験がある元韓国政府高官は「ブリンケン氏と一緒に仕事ができればハッピーだと言ったバイデン米大統領の言葉を思い出した」と語る。

ブリンケン氏は大統領選挙期間中、バイデン氏陣営の外交政策顧問を務めた。2期目のオバマ政権では国務副長官を務めたほか、副大統領時代のバイデン氏に国家安全保障担当補佐官として仕えた。「理想のプロフェッショナル外交官」という評価で知られる。

ブリンケン氏の外交の白眉は18日に始まった米中外交トップ会談の初日だった。一部報道陣に公開する冒頭発言は米中それぞれ2分間ずつの約束だった。ブリンケン氏は、新疆ウイグル自治区や香港の人権問題を取り上げ、「ここで取り上げる義務がある」と強調した。これに対し、楊潔篪氏は「中国には中国の民主主義がある」などと約15分間にわたって猛烈に反論した。

通常、ここで報道陣は退出となるところ、ブリンケン氏は「hold on(ちょっと待って)」と呼び戻し、結局報道陣を前にしたやり取りが1時間ほども続いた。

関係筋によれば、ブリンケン氏の冒頭発言は、事前によく練られたものだった。ブリンケン氏は日本や韓国でも、中国の人権問題に言及。16日に発表された日米2プラス2の共同声明は、安全保障協議であるにもかかわらず、「閣僚は、香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有した」という表現が入った。ブリンケン氏は17日に行われた米韓外相会談でも、やはり報道陣を前にした冒頭発言で中国の人権問題に言及した。

元韓国政府高官は一連の「人権発言」について、「一石三鳥の効果がある」と語る。第1に、人権問題は中国が一番触れて欲しくないアキレス腱だ。第2に、米国が人権を重視する伝統的な外交手法に戻ってきたという安心感を与える。第3に、国際社会で中国と対決する場合、、誰もが反対しにくい人権問題を取り上げることで、中立的な国々を巻き込む効果が見込める──というわけだ。

文=牧野愛博

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