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2021.03.07 18:00

エンタメとリアルに見る、韓国「財閥」の醜美な世界


ロッテグループといえば、長期にわたる息子たちの兄弟喧嘩が有名だ。80年代から90年代にかけて、シン・ギョクホは長男であるシン・ドンジュ(重光宏之)に日本のロッテグループを、そして次男シン・ドンビン(重光昭夫)には韓国のロッテグループを任せた。二人とも日本で生まれ、青山学院大学を卒業している。特に兄のドンジュは「韓国語の発音がまるで日本語だ」と韓国人たちの間で話題となった。

右往左往する息子たちのせめぎ合い、一時は毎日のようにロッテグループのニュースが飛び交っていた。加えて、父であり会長だったシン・ギョクホは80歳でも非常に健康であったがため、なかなかトップの座を降りず、兄弟の仲をこじらせた。

人々は、ロッテグループの不穏な空気に加え、親子の会話が日本語という点にさらに疑問を抱いた。「果たしてこれは韓国企業なのか」。いくらグループの会長と息子たちが韓国籍を持っていても、韓国で得た収益を韓国市場に再投資しても、国民たちにとっては不思議な財閥であった。

シン・ギョクホは子離れ、会社離れできずに98歳まで生きた。車椅子に乗り、とても話せるような姿をしていなかった当時90代半ばの彼を、多くのメディアが囲んでいた光景は非常に「おかしな」財閥と韓国社会を映し出していた。

財閥が映し出すものとは


韓国ドラマで財閥が悲惨な描かれ方をするのも無理はない。権力、平等な資産、世間からの支持、財閥が持つものはあまりにも大きすぎて、一歩間違えると一族の仲を壊してしまい人々の神経をすり減らしてしまう。

ドラマ「愛の不時着」では、主人公ユン・セリが幸せそうに家族たちと食卓を囲んだり、連絡をとったりするシーンはなく、その真逆の状況が描かれていた。「幸せはお金でも成功でもない」というメッセージが主人公の姿を通して映し出されていたのではないだろうか。

決して善良には映らない財閥が、韓国社会と経済を支えている。そんな皮肉さを持ちながら、韓国社会は回っていく。韓国ドラマなどで、財閥のイメージを覆すような描かれ方がする日がくるのだろうか。

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文=裵麗善/Ryoseon Bae

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