米疾病対策センター(CDC)は2月、パンデミック中の学校運営方法に関する議論を踏まえて小中学校の再開を勧告した。学校再開は欧州でも各国政府が優先的に取り組んでいるものの、ワクチン接種が遅れ気味なうえ、感染力の強い変異株も広がっていることから、大きなリスクをともなうものになっている。
この点で一歩先を行っているのがオーストリアだ。最近、美容院や理髪店の予約にPCR検査や抗原検査の陰性証明取得が義務づけられたのをきっかけに、国内の検査数は過去最高に急増。地元紙プレッセによると、2月14日までの1週間にはPCR検査と抗原検査は合計で152万2739回実施された。
政府は国民が各種サービスの利用を再開できるように、検査数を週350万回まで増やす目標を掲げ、3月1日からは自宅でできる抗原検査のキットを国民全員に1人最大5回分配布する。今後は学校や企業での検査も増えるとみられる。
オーストリアでは2月、オンライン授業に切り替えていた学校が約3カ月ぶりに再開した。当面は、再開にあたってすべての生徒・学生に週に1度、月曜日に検査を行うことを義務づける。検査数はその後、週2回に増やされる方向だ。
子どもが行う検査は、鼻の中をこすった綿棒をカートリッジに挿入し、溶液を数滴垂らすと15分で結果がわかるもので、「鼻をほじるのと同じくらい簡単」とされる。検査キットは中国製で、1回あたり2.9ドル(約310円)。政府はこれまでに2400万回分を発注したという。
検査は、小学生は親ができるように家で、中学生以上は学校で行う。親が大量検査への参加を拒否した場合、子どもは引き続きオンラインで授業を受けることになる。毎週およそ220万人回の検査が学校で実施されるようになる見込みだ。
オーストリアは、学校での感染リスクを抑えるために「3重の安全網」を敷いている。14歳以上の子どもを対象としたN95マスクの着用義務づけ、定期的な検査の実施、生徒・学生の全体を半々に分けて行う2シフト制の授業だ。
研究機関でのPCR検査に比べ、抗原検査は感度が低いと批判されることが多い。だが研究者らによれば、抗原検査を繰り返すと、大きな集団内で最も感染を拡大させる患者を見つけやすくなり、ひいては感染拡大を抑えやすくなることがわかってきている。
オーストリア各地で2月中旬に実施されたおよそ130万回の検査では、陽性反応が出た子どもはわずか364人、教員は172人だった。比率の低さは数カ月におよぶロックダウンの効果とも考えられるが、一部の研究者は子どもの検体採取のやり方が適切でなかった可能性があると指摘している。
いずれにせよ、親も子どもも、検査結果が陰性だったからといって誤った安心感をもってはならない。なぜなら、それはあくまで、検査日時点のその人の感染力を捉えたものにすぎないからだ。マスクの着用や対人距離の確保など、ほかの措置も引き続き義務にすべきだ。