英タイムズ紙の報道によると、いかにも米国的な「ジーンズとスウェットシャツ」のブランドであるGAPは、英国内にある95の実店舗をすべて閉鎖し、オンライン販売専業になる可能性があるという。すでにオンラインに販路を切り替えたブランドとしては、デベナムズ、トップショップ、ミス・セルフリッジ(Miss Selfridge)などがある。
GAPは、新型コロナウイルスのパンデミックが始まる以前から、若い消費者をつなぎ留めるのに苦慮していた。その背景には、ZARAやH&Mといった、より安価なファストファッション・ブランドや、エイソス、プリティ・リトルシング、ブーフーといった新しいオンライン通販サイトの台頭がある。
イギリスにおけるGAPの売り上げは、2020年2月1日までの1年間で、前年比9.5%マイナスの1億9510万ポンド(約290億円)と落ち込み、営業損失は4070万ポンド(約60億3860万円)に達した。
GAPは2020年、カニエ・ウェストおよび彼のブランドYeezy(イージー)とのあいだで、「複数年」にわたるパートナーシップ契約を結んだと発表した。このコラボレーションの結果として、2021年上半期にはメンズ、ウィメンズ、キッズ向けの新たなアパレル製品シリーズが、オンラインおよび実店舗で発売される予定だ。
このようなセレブとの提携が、20代前半のオーディエンスのあいだでオンラインにおけるGAPブランドの評価を高める起死回生の一手となるかどうかは、今後の成り行きを見守るしかない。だが、消費者の購買行動には大きな変化が起きている。
新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴うロックダウンにより、その変化はさらに加速している。そんななかで、小売店が今後営業を再開した際に、消費者は商業地区における「GAPの不在」を残念に思ってくれるだろうか?
英国のボリス・ジョンソン首相は2月22日に演説を行い、ロックダウンを行っているイングランド向けに、経済再建と制限緩和のロードマップを示した。この中では、1月6日から休業している必要不可欠ではない小売業について、4月12日以降は営業再開を許可するという指針も示された。
これに従うと、イングランドの実店舗は、かなりのかき入れ時となるイースター(2020年は4月4日)前後の時期に営業ができないことになる。これまでの1年を振り返ると、のべ数カ月にわたって実店舗での販売ができない状況に置かれてきた店舗も多い。
商業地区の店舗に関しては、さらに懸念すべき事態が起きている。英サンデー・タイムズは、百貨店チェーンのジョン・ルイスが、さらに8店舗の閉鎖を検討していると伝えた。英国全土に42の販売拠点を持つ同社は現在、大幅な企業戦略の見直しを迫られている。