つまり、アルコール離脱に伴って一連の身体的反応が生じることは広く認識されているが、離脱によって生じる「不安、不快、痛み、短気、睡眠障害、全身の倦怠感」といった症状も、さらなるアルコール使用の動機になるということだ。
そうした症状の一部は身体的な乱れに直接関連があるものの、真の問題は、脳の報酬系とストレス系が変化することにある。そして、そうした脳の変化は、さらなる飲酒の動機を生み出すようだ。
アルコール関連死への影響
アルコールは否定的感情を一時的に低下させるため、短期的には気持ちが楽になる。そして、まさにその性質により、飲酒を続ける習慣が強化される。だが、時とともに脳の報酬系とストレス系が変化し、アルコールから離れているときの苦痛が大きくなる。そして、そうした否定的な感情や苦痛は、「絶望死」として表出する。
たとえばアルコールは、薬物過剰摂取による全死亡例の推定15%、自殺の26%、肝臓疾患による死の50%に関係している。
パンデミックがいまだに日常生活の大部分を支配していることから、NIAAAの関係者は、長引く孤立やストレス、治療選択肢の欠如の影響を懸念している。
だが、アルコールの使用と乱用が人の精神や感情、身体に対してもたらす影響について、より多くの知識を得ることで、予防や治療、ケアの面で大きな進展が見られる可能性があり、また、こうした点について新たな定義が重要だとクーブ博士は指摘した。
神経科学とアルコールが交差する失意過敏症のような領域の解明が進めば、我々は、なぜアルコールに関連する行動を選択するのかという理由に関する十分な情報にもとづいて判断を下せるようになる。そして、健康・安全・幸福に悪影響を与える行動を変えられるようになるはずだ。