今回、2人の研究者が詳細な分析を行ったところ、長い目で見て市場に勝つことができる可能性が最も高いとみられる戦略は、400あるファクターのうちわずか4つであることが判明した。
データマイニングの成果
金融関連の研究者が利用できるツールのなかで、近年、飛躍的な成長を遂げているものが2つある。それは、コンピューターの演算能力と、株式市場のデータセットだ。
数十年前の研究者たちは、多くの手間と時間を要する、手作業による分析を行っていた。おそらくは50回に1回ほどの確率でランダムに発生するような株式市場のアノマリー(経験的に観測できる規則性)を発見できれば、それは稀なことであり、高い評価を受けた。
これに対して現在の研究者は、昼食を食べている最中に50回の分析を実行できる。検証される関係性や概念の数が増えれば、有望そうに見える候補も、より多く見つかるだろう。しかしそれらの候補はどうやら、見かけほど良いものではなさそうだ。
偽陽性
残念なことに、これらの有望に見える候補の多くは「偽陽性(false positives)」のおそれがある。数百件の概念について検証を行う場合、ランダムに起こる100回のうち1回の確率で現れるものは、実際にはパターン的な事象ということになる。実際、1000件の概念を検証すれば、1000回に1回の確率で現れる事象をしばしば目にすることになるはずだ。
これは、「十分に多いサルにタイプライターを与えれば、いつかそのうちの1匹が、シェークスピアの作品を書く日が来る」というのと似た議論だ。だが、そんなことは起こるはずがない。
そこで、デューク大学フュークワ経営大学院のキャンベル・ハーヴェイ教授とパデュー大学のヤン・リュー(Yan Liu)という2人の研究者は、共同執筆した論文(『A Census of the Factor Zoo』)において、真にトップに位置づけられる、一握りの投資アプローチの特定に乗り出した。
つまり、統計的検定で本当に優れた成果をあげている最近の研究や、調査した時期について優れた統計学的結果を残した過去の研究を特定しようとしたのだ。