兵士のPTSD症状の緩和に期待をかける元米軍幹部も
PTSDに関連する睡眠障害を原因とする、慢性で難治性の症状に悩まされるリスクが特に高いのが、軍務に就いていた兵士たちだ。
元米陸軍大将で、第32代副参謀長を務めたピーター・クアレリ(Peter Chiarelli)は、「この療法は、心的外傷後のストレスや悪夢障害に苦しむ者にとって、真の意味で救いになる可能性を秘めている」と期待を寄せる。クアレリは、PTSDのより一般的な治療法である「薬理学的アプローチ」とナイトウェアを比較した上で、「非侵襲的な治療法があることはとても重要だ。ナイトウェアは、体内の化学反応を変えることがない」と語った。
「PTSDの蔓延は、軍隊内の大問題だ」とクアレリは指摘した。副参謀長時代に、深刻な心的外傷について調査したところ、PTSDの発生件数は、他のタイプの深刻な負傷と比べて3倍以上と突出していることが判明したという。
当初クアレリは、最も影響が大きいのは四肢の喪失といった身体的負傷ではないかと予想していたが、調査の結果、戦闘に関連する負傷からくる重度の合併症のうち30%以上がPTSDに起因するものであると結論づけた。
「PTSDは、軍務に就いた人物およびその家族に非常に大きな影響を及ぼす」と、クアレリは解説する。「兵士は、心身の広範な機能に不調をきたす。配偶者や子どもたちも深刻な影響を受ける」
治療用プラットフォームであるナイトウェアの効果については、70人の患者を対象に、ランダム化されプラセボ効果にも配慮した30日間の試験によって検証された。睡眠の質については、PTSDの患者を対象とする基準を用いた被験者の自己申告で評価した。
試験が行われた夜を通じて、Apple Watchが体の動きと心拍数をモニターし、取得されたデータポイントはナイトウェアのサーバーに送られ、同社の独自アルゴリズムが、各患者について個別の睡眠プロフィルを作成した。悪夢を見ていることを検知すると、ナイトウェアはApple Watch経由で患者に振動を与える。この振動によるフィードバックが悪夢の頻度と深刻度を軽減させ、数日から数週間で、有意の睡眠改善につながった。
ナイトウェアには禁忌はなく、忍容性も高く(有害な作用が被験者にとって耐えうる範囲に収まっている状態)、これまでの試験では、被験者を覚醒させることもなかった。
このアプリに関しては、240人の患者を対象とした規模を拡大した試験(ランダム化のうえプラセボ効果を考慮したもの)が、複数の地点で進行中だ。その試験結果は、2022年に判明すると見られている。