「ナイトウェア(NightWare)」という名のこのシステムは、Apple Watchを使うもので、特許を取得した人工知能(AI)ソフトウェアを採用している。
ナイトウェアは、Apple Watchを装着して眠っているユーザー各人の睡眠パターンを認識。ユーザーが、悪夢を見たり睡眠を妨げられたりしている時に起きる生理的な変化を検知するという。
変化を検知するとApple Watchが振動し、寝ているユーザーを起こすことなく悪夢に介入する。この仕組みは、いびきをかいている人をパートナーがそっと小突くのと似たようなものだと説明されている。
それぞれのユーザーの特性に合わせたアルゴリズムは、継続的にアップデートされ、各ユーザーの傾向を「学習」して、動的に調整を行う。臨床試験では、ユーザーの悪夢を見る頻度や、夢の内容の深刻度が実際に軽減され、有意の睡眠改善効果が認められた。
FDA、およびミネアポリスに本社を置く開発元の企業によると、ナイトウェアは、悪夢に関連する睡眠障害の一時的軽減のために処方される、史上初かつ唯一の製品だ。その対象は、悪夢障害あるいはPTSDが原因となった悪夢の症状を抱える22歳以上の成人とされている。
このプラットフォームは、新しいFDAのカテゴリーである「プログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD)」として認可された。このカテゴリーには、慢性疾患の管理や行動障害の解消を目的とする、少数の新しい治療法が含まれている。
ナイトウェアは、2019年にFDAの「画期的治療薬(BT)」指定を受けた。このプラットフォームは、特許を取得したAIアルゴリズムとApple Watchを活用し、各人の睡眠サイクルのバイオメトリックパターンを監視。悪夢に関連する睡眠時のストレスの上昇を特定する。ナイトウェアは、医師の処方を受けた患者だけに提供され、自宅での使用を想定している。
この製品がFDAから認可を得たことは重要だ。というのも、難治性の睡眠障害は、最も報告例が多いPTSDの症状の1つだからだ。専門家によると、数十年にわたって続くケースも多く、心身両面の不調に加え、重度の精神的疾患を引き起こすこともあるという。
PTSDの患者のうち、心的外傷に関連した頻繁に繰り返す悪夢に悩まされている人の割合は約80%に達していることが、複数の研究により明らかになっている。こうした悪夢は、数カ月、場合によっては数年にわたって続くことがあり、悲しいことに、PTSD患者の高い自殺率の要因になっていると考えられる。