大学卒業後、米大手投資銀行のモルガン・スタンレーに入社。26歳でヘッジファンド会社を共同設立した。現在、彼のふたつのYouTubeチャンネルの登録者はおよそ35万6000人(日本語版)と9万5000人(英語版)に及ぶ。金融業界のトップで活躍してきた高橋の金融リテラシーを高める発信に、多くの人が注目している。
2020年は書籍を3冊出版したほか、今年2月17日にも新たな書籍「アフターコロナ最強の投資法、ゴールドと貴金属」(ダイヤモンド社)が発売予定。怒涛の勢いで活躍の場を広げている。
前編では、彼のライフヒストリーをふり返りながら、2020年にYouTuberとなった理由について迫る。そこには、日本にルーツを持つ高橋の、日本社会に対する課題意識があった。
「10万円より、20万円がいいでしょう?」お年玉から始まった投資
外資系企業で、得意の日本語を用いて活躍していたアメリカ人の父と日本人の母のもと、東京で生まれた高橋ダン。2歳の頃にミシガン州のデトロイトに引っ越し、そのあとも日本とアメリカの行き来をしばらく繰り返し、最終的にボストンに落ち着くことになった。
高橋一家がボストンに住むことになった理由の一つは、高橋含む3人の子供に、アメリカの教育を受けさせるためであった。
彼の「お金との付き合い」は12歳から始まった。母の実家である日本へ正月に一時帰国した時のこと。一家は毎年日本に帰国していなかったため、親戚たちから数年分まとめてお年玉をもらった。その額は、10万円にもなった。その姿を見て、父からこう言われた。
「10万円より、20万円の方がいいでしょう?」
小学生だった高橋に、そのお金を投資にまわしたほうがいいと話し始めたのである。高橋の父は、運用によって得られた運用益を元本に上乗せし、利息が出るたびに元本が増える「複利効果」について、12歳でもわかるように説明した。米国債に投資をすると利率は当時およそ7%。毎年続けると、複利成長率によって10年間で約2倍になる。
「お年玉をきっかけに、お金を増やしたいという感情が生まれました。安全でほぼ確実に2倍になると、小学生だった僕でも納得できるように、父が説明してくれました」
そのあと、大学に入学してからも少しずつ株を買い続けた。モルガン・スタンレーでサマーインターンをして貯めたお金を、全て株につぎ込んだ。初めて買った株は、オイル株やエネルギー株。投資の理由は、単純にコモディティが上がると、当時考えていたからだ。
しかし、12歳の頃の投資と同じように、結果はポジティブなものにはならなかった。
「大学時代の株投資は、ほとんど損でした。わからないことばかりでしたから、ギャンブルのような感覚でした。10代の僕にあったのは、勢いと感情だけでした」