UTECはどのように海外のスタートアップを見つけ、投資しているか
(1)グローバルな大学ネットワーク
世界中の数々の大学・研究機関と協力している。例えば、Bugworks社が入居しているインドのC-CAMP(Centre for Cellular and Molecular Platforms)、免疫プロファイル解析技術のImmunoScape社を生んだシンガポールのA*star (Agency for Science, Technology and Research)、無線センサー技術のLocix社と提携しているUC Berkeley(カリフォルニア大学 バークレー校)などが挙げられる。
(2)複数の有力グローバルVCとの協力
UTECでは以前から、米国のArch Venture PartnersやNEA、インドのInventus、シンガポールのiGlobeなど、各国の有力グローバルVCと共同投資を行ってきたが、2019年には、インドのシードテクノロジーVCとしてアクティブに活動しているBlume Venturesと提携。シード期のインドDeep-techスタートアップに投資する試みとして、BUDHA (Blume UTEC Deep-tecH Accelerator)プログラムを立ち上げた。Agara Labs社は、このプログラムを通じてUTECが投資を行った一社である。同社は、米国とインドを拠点に、企業向け自律型音声AIエージェントを開発するスタートアップで、現在日本の複数の企業やコールセンター事業者とも協議中。
(3)データサイエンスを活用した有望な研究・科学者の探索
ソーシングやDue Diligenceにもデータサイエンスのアプローチを活用。東京大学で自らデータサイエンスの博士号を取得した郷治氏は「現在、研究成果に立脚するスタートアップの起業に有望な“Startup Readiness”を備える世界最先端の研究や有望な科学者を探索するために、機械学習を活用して学術論文・知的財産・研究環境などの分析を行っているところ。データサイエンスを活用することで、優れた研究を活かすスタートアップの立ち上げを効果的に支援することを目指している」と語る。
日本企業と海外スタートアップの相互補完性
日本は、世界でも最も老舗企業が多い国である。世界中で100年以上の社歴を有する企業の41.3%、200年以上の社歴を有する企業の65.0%は日本企業である*1。そうした長期志向を有する日本企業と、STEM(科学・技術・工学・数学)教育を受けた若者が興すインドや東南アジアのスタートアップとを組み合わせることで、新たな可能性が生まれる。
*1 周年事業ラボ調査データより
例えばPayPayは、日本のソフトバンクとヤフージャパン、インドのユニコーン企業PayTmとの合弁事業を立ち上げており、ユーザー数は2500万人を超え、日本の加盟店数は200万近くになるなど成功を収めている。(出典)シリコンバレースタートアップのBlaize(旧Thinci)も、日本のデンソーやSPARX Group(出典)と協力して、自動車市場向けにカスタム設計したAIシリコンチップを製造している。