ビジネス

2021.01.26

横浜市と地元スタートアップが連携 フードデリバリー「うまいぞ!横浜。」プロジェクト秘話


他社を凌駕するスカイファームの強み


大手のデリバリー業者が市場を牽引する中でここまでの成功を収められた理由は何か。1つには、配送スタッフの違いがあると木村は言う。

「弊社では自社雇用しているスタッフに加え、横浜に本社を置くメッセンジャー会社のクリオシティさん、同じく横浜を拠点にしたタクシー会社の三和交通さんとアライアンスを提携して配送を行っています。『地元の人が運ぶ』というのが大きなコンセプトですね」

横浜の道を知り尽くした地元スタッフであれば、例えば「元町商店街の飲食店を5つ回って」というオーダーにも混乱することなく対応できる。また、そもそも「横浜が好き」「横浜の力になりたい」という想いのもとに参画しているため、「NEW PORTのスタッフ」としての知見が全スタッフの中にしっかり共有され、蓄積されていく。


配送風景。横浜の街に精通したスタッフ一人ひとりがNEW PORTの配送クオリティの高さを支えている。

システム上の特性として、同じ商店街の中でのオーダーであれば1回の注文で同時に受け取れるという点も魅力だ。例えば1人が中華料理店Aのチャーハン、もう1人が洋食店Bのハンバーグ、もう1人がイタリア料理店Cのピザを注文したい場合、一般のデリバリーサービスではオーダーが3つに分かれる上、手数料も3回分かかる。ところが「NEW PORT」では、この3店が同じ商店街にある場合は注文が1回で済み、手数料も1回分しかかからないのだ。店舗ごとではなく、商店街単位で組んでいるスカイファームの強みだ。

配送スタッフが固定されていることは、飲食店にとっても安心感につながる。電話がつながりにくい時間帯、一般客ではなく従業員用の出入り口の有無など、店舗特有の情報を配送スタッフが共有しているため、互いに仕事が進めやすい。

また「うまいぞ!横浜。」プロジェクトにおいては、飲食店がスカイファームに支払う月額5000円の固定料金を2021年末まで無料としている。売り上げに応じた料金は発生するものの、飲食店としては固定費を抑えられる上、「横浜」に根づいたデリバリーサービスに参加するメリットは大きいだろう。

そして、木村たちスカイファームを広報、プロモーションの面で支援するのが横浜市。市の協定事業として積極的に取り組んでおり、テレビやラジオ、紙媒体も含め、地元メディアへの露出を増やした。依頼があれば、商店街や飲食店を横浜市がスカイファームに紹介するといった支援も行っている。

YOXO BOXをハブにしたエコシステムを目指して


「これまでは加盟店舗数を増やすことに主軸を置いていましたが、今後はお店のインタビュー記事を拡充させたり、月間の人気ランキングを作ったり、限定メニューを展開させたり、『うまいぞ!横浜。』ならではのコンテンツを増やしていきたいですね」。

例えばメインを「センターグリル」、デザートを「えの木てい」に、といった「うまいぞ!横浜。」だけのセットメニューの展開も検討中。木村のアイデアは止まらない様子だ。


「NEW PORT」サイト内に掲載されている、加盟店舗へのインタビュー記事。記事の本数 はさらに増えていく予定だ。

実は、木村はスタートアップ支援の拠点であるYOXO BOXにも、メンターとして深く関わっている。スタートアップの先輩として創業間もない起業家にアドバイスをするほか、YOXO BOX主催のビジネスイベントに登壇する機会も多いとか。スタートアップの集積を強化していきたい横浜市としても非常に頼りにしている存在なのだ。木村自身も、YOXO BOXで知り合った起業家から得るものは多く、そのつながりを自社のビジネスに活かしている。

奥住はそういった様子を優しい眼差しで見つめる。「横浜市としては、スタートアップ支援のための『場・ハブ』としてYOXO BOXを用意しました。きっかけは作って、あとは勝手に……というわけではありませんが(笑)、ここをハブにしていろんなことが自発的に起こっている現在の状況は、とても望ましいことですよね。YOXO BOXがあって、スタートアップがあって、クリエイターがいて、近くには大企業があって、金融機関もあって。それらが自然な形としてエコシステムとして循環していく。それが私たちの理想です」

PR TIMES STORYより

ForbesBrandVoice

人気記事