日本愛に満ち溢れた国際弁護士のケント・ギルバートと、国内外で活躍する「ほめ育」コンサルタントの原邦雄の二人が、そんな日本人の自信について徹底議論した『日本人の自信を取り戻す「ほめる力」』(光文社)が刊行になった。刊行を記念し、書籍から一部を公開する。
苦労して身につけた日本語の実力
ケント :ハワイの研修後はすぐに日本に来て、到着翌日から布教活動を始めました。福岡の中心街で勇気を出して見知らぬ人に話しかけて、宗教の話をするわけです。
当時は外国人が珍しかったので、たくさんの人が立ち止まってくれました。日本に来て実際に会話してみると、私の話していることは伝わるのですが、相手の方が話している内容がまったくわかりませんでした。人間は教科書どおりに話をしてくれないからです。
最初は同僚に通訳してもらいつつ、それでも2、3週間で聞き取れるようになり、3カ月目には新しい宣教師が来て、私が先輩として指導することになりました。振り返って考えると、無我夢中の2年間でしたね。
原:大変な苦労をした結果、成果が出たわけですね。
ケント:もし、私がこんなハードなことをせず、ダラダラと日本語の勉強をしていたら、とても日本語は身につかなかったでしょう。
蛇足ですが、漢字をちゃんと覚えたのは布教活動を終えて大学に戻ってからです。宣教師は話すのが仕事で、書くことはそれほど必要ありませんでしたので、伝導中に400字ぐらいしか覚えませんでした。固有名詞(人の名前、地名など)が多かったです。
大学に戻って、日本語学科の授業を受けると、漢字には「部首」というものがあり、それを組み合わせることで漢字ができていること、ふたつの漢字を組み合わせると「熟語」になり、また新たな意味が生まれるといったことを初めて理解しました。日本での経験があったので、とても覚えやすかったですよ。3年生が終わって、夏休みを利用して、教授と一緒に、外国人のための漢字の教科書を3冊書くことができました。これは今でも私の母校の大学で使われています。
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原:最後は教科書を書くところまで到達されたのですね。ちなみに、今までに何冊くらいの本を出されているのですか?
ケント:全部で60冊以上になると思います。教科書的なものは漢字の教科書の3冊だけですが、英会話の本も3冊書きました。だから苦労して成果を得るという経験は、とても人生にとってプラスになると思うのです。
子育てや学校教育だけでなく、会社の経営者も同様です。経営者として社員に苦労させるのはいいことですが、成果が上がらない場合は本当にかわいそうです。