発表された論文によると、直接的な空気の流れがある場合、新型コロナウイルスはソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)で基準となることが多い2メートルを超える距離を非常に短時間で移動できることが示唆された。
研究チームによると、新型ウイルスはわずか5分の間にこの2メートルの3倍以上の範囲に拡散する可能性があることが分かった。この時間枠は、食事客がレストランで食事する際にマスクを外す一般的な時間よりもはるかに短い。研究チームは、テーブル間に2メートルの距離を設けることは、食事客の感染を防ぐ上で十分ではないと結論づけている。
研究チームは、韓国のあるレストランで今年起きた小規模な感染事例を分析。この事例では、2人の食事客が6.5メートル先に座っていた無症状の客から感染した。研究チームによると、原因は天井の空調で、これにより感染者から2人に向けた直接の空気の流れが作られた。
研究チームは聞き取り調査と防犯カメラの映像、携帯電話の位置情報データを基にし、3人が同時に店内にいたのはわずか5分間だったと結論づけた。3人の間にはそれ以外の直接的・間接的な接触はなかった。
新型ウイルスの流行が始まってから、レストランでの外食(特に屋内のもの)が特に危険な行動であることを示す証拠はいくつも出てきた。米疾病対策センター(CDC)が9月に発表した調査結果では、新型コロナウイルスに感染した成人は感染前2週間にレストランで食事をしていた割合が倍となっていた。
レストランを閉鎖せずに食事客の安全を確保する方法が提案された調査もある。例えばスタンフォード大学とノースウェスタン大学の研究チームは先月、感染拡大の恐れなしにレストラン店内での食事を許可することは可能だと論じた。解決策となるのは、建物の広さなどに基づき、各店内の最大収容人数を減らすことだ。
ハーバード・グローバル・ヘルス研究所とブラウン大学公衆衛生学部がまとめるリスク評価マップでは、感謝祭から約1か月たった現在、米国のほぼ全ての州が、新型ウイルスの拡散で「高リスク」のカテゴリーとなっている。公衆衛生の専門家によると、このような状態では、レストランで安全に外食をすることは難しい。
CDCは最近、マスク着用に関する指針を強化し、「2歳以上は全員、公共空間や自分と同じ家庭で暮らしていない人の周囲でマスクを着用すべき」と推奨している。しかし、外食に関しては強く反対せず、客が「食事中以外は最大限マスクを着用したり、同居していない人と食事をする場合は適切な対人距離を維持したりといった予防措置を取ること」を勧めている。