ヘルスケア

2025.05.21 12:00

中東でMERSコロナウイルス感染拡大、過去には韓国で死者も 症状や対策を解説

サウジアラビアの首都リヤド近郊で開催されたラクダの品評会。2021年12月28日撮影(Eric Lafforgue/Art in All of Us/Corbis via Getty Images)

サウジアラビアの首都リヤド近郊で開催されたラクダの品評会。2021年12月28日撮影(Eric Lafforgue/Art in All of Us/Corbis via Getty Images)

米国のドナルド・トランプ大統領は最近、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の中東諸国を歴訪した。カタールでは歓迎の一環として、同大統領の車列が王室のラクダに護衛された。筆者はこの光景を見て、大統領の随行員は、サウジアラビアで最近、ラクダが媒介する「中東呼吸器症候群(MERS)」コロナウイルスが流行していることを把握していたのだろうかと疑問に思った。

サウジアラビアは2025年3月1日~4月21日の間に9件のMERS感染例を報告した。うちふたりが死亡し、首都リヤドではひとりの患者に接触した医療従事者6人が集団感染した。

MERSとは何か?

MERSは新型のコロナウイルスで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす「SARSコロナウイルス2」に類似している。新型コロナウイルス感染症と同様、MERSは呼吸不全を引き起こし、死に至ることもある。自然宿主は中東原産のヒトコブラクダだと考えられている。アジアに生息するフタコブラクダとは異なり、ヒトコブラクダはアラビア半島の気温の高い砂漠地帯に生息する。MERSはヒトコブラクダとの接触によって感染する。新型コロナウイルス感染症と同様、人間は一度感染すると、他の人にウイルスを拡散させる可能性がある。

MERSは2012年、サウジアラビアで初めて確認された。以降、27カ国で2627件の症例が報告され、うち946人が死亡し、致死率は36%となっている。全症例の84%はサウジアラビアで報告されており、2019年以降は中東でのみ感染が確認されている。2021年以降の報告は毎年少数例にとどまっているが、MERSは感染力が強く対策が不十分であることから、世界保健機関(WHO)は、パンデミック(世界的な流行)の可能性のある憂慮すべき病原体に分類している。

サウジアラビアの最近の感染例は、MERSが医療現場に侵入した場合の危険性を示している。韓国では2015年、同ウイルスが医療施設を通じて大規模に広がり、186人の感染が確認され、38人が死亡。致死率は20%に上った。最初の感染者には中東への渡航歴があった。

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翻訳・編集=安藤清香

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