そのためには、医療の人的資源に投資する以外に手段はありません。そのためには、持続可能な資金調達モデルが重要です。High-Level Commission on Health Employment and Economic Growth(医療部門の雇用と経済成長に関するハイレベル委員会)の報告では、医療分野では投資に対し得られる利益は9倍。また、平均寿命が1年延びることで一人当たりのGDPが約4%増加するとされています。
世界に広がる医療の労働力不足は、各国の発展計画における重要優先課題のひとつです。さまざまな関係者の協力による効果的な対応策としては、以下のものが挙げられます。
1. ガバナンスの強化
強固なガバナンスの枠組みを構築して、医療分野での教育と雇用、国際医療交流、医療従事者の移住、革新的な連携モデルの指針を示すことが重要です。持続可能な官民連携を推進するには、財政、教育、訓練など、多岐にわたる良質な資源を利用できるような組織モデルを強化することが求められるでしょう。
2. 新しいテクノロジー
業界では、医療従事者の訓練やスキルアップやエンパワーメントの目的で、eヘルスやeラーニング、AI、VRシミュレーション、IoTの導入が急速に進んでいます。また、在宅医療用の個人にカスタマイズされたウェアラブル機器から、ポイントオブケア技術、ドローン技術、遠隔地医療のための遠隔治療戦略まで、医療を届ける手段が大きく変容しつつあります。
その変革はビッグデータとその分析に基づいて急激に進んでいます。そして、これらの新テクノロジーの導入によって新しいスキルが求められるようになり、デジタル医療を提供するための雇用の口が増えてきたのです。
そこで、テクノロジーと労働力を調整するための明確なロードマップ作りが肝要になります。例えばインドでは、シンクタンクのNITIアーヨグが、人工知能に関する国家戦略と新生インド戦略@75において、テクノロジーとイノベーションを中心とした医療関連政策の策定を計画。これは医療資源を増やすうえで大きな意味を持ちます。
3. 業務のバランスの改善
OECDの国際調査では、看護師の79%と医師の76%が、自分たちが持つ高い知識や技能に見合わない業務を行っていることが明らかになっています。世界的に医療従事者の技能が適正に配分されていないため、労働力を合理的に整理し直して、負担が大きい疾患に効果的に対処できるようにしなければなりません。