世界中で深刻な医療現場の人手不足 求められる5つの対応策とは

医療人材のひっ迫が重大な課題となっている(Photo by Unsplash)


特にNCDsは世界の死亡原因の71%を占め、対策をしないと2030年には全世界で30兆ドルのコストが発生すると予測されています。

看護師や総合診療医に、救命処置の選択、急性疾患の迅速な診断、適切な専門医への紹介などの基礎的な技能の訓練をする方法もあります。これにより、世界で限られた人数しかいない専門医への依存を減らすだけでなく、労働力増強に必要な時間とコストを削減することができます。

4. 新しい医療モデルの構築

病院や診療所のシステムでは、予防医療重視への転換が必要。健康の社会経済的要因を広く考慮した総合的な医療アプローチを導入すべきです。

その一方で、「ハブアンドスポーク」型の医療資源の配置や人材育成により、疾病の監視・予防と外来診療に焦点を当てた良質で地域密着型の総合医療サービスを提供する、新しい医療モデルを構築する必要もあるでしょう。これにより、不必要な入院や救急診療が抑えられ、地域社会全体の健康にも良い結果をもたらします。

5. 持続可能性とジェンダーバランス

医療分野の雇用と教育システムにはジェンダーの格差と不平等が存在しています。例えば、WHOによると、世界の医師のうち女性はわずか30%ですが、看護師では70%以上にのぼります。インドでも同様に、看護師の大部分は女性ですが、標準医療の医師だと女性はわずか16.8%にすぎません。

一方、ILOのデータでも示されている男女間の賃金格差も懸念すべき問題のひとつとして挙げられます。そこで、積極的な施策により、労働力のバランスをとってジェンダー不平等を是正し、同等の労働に対する男女同一賃金、女性が働きやすい労働環境、女性人材の育成のための投資を実現する必要があります。

国際レベルでは、医療資源をより有効に活用するために、各国の医療教育での協働や交流プログラムを促すことが求められます。例えば、国によっては看護学コースのカリキュラムが類似していますが、文化の違いによって問題が生じることがあります。

インドとスウェーデンを例にとると、看護学のカリキュラムにはそれほど差がなく、看護師の交流が大いに期待できますが、言語の壁が障害となっています。しかし、この問題を解決し、医療従事者の交流を支援する調整は難しくありません。

今こそ、政策決定から教育、訓練、財政まで、医療に関わるすべての関係者が歩調を合わせて具体的な課題や目標に取り組み、労働力の生産性を高め、人材のあり方を重視した方策を目指さなければなりません。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載、2019年8月に初出のものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Shobana Kamineni, Executive Vice Chairperson, Apollo Hospitals Enterprise Limited, Chairperson, Apollo Munich Health Insurance

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