2018年にツイッターを離れた彼らは、自分たちの広告業界での知見が、セキュリティの世界でも通じることに賭けた。フェイスブックやツイッターなどが広告で活用する「行動プロファイリング」理論を、フィッシング詐欺の検知に役立てようとしたのだ。彼らのアイデアは実際、多くの顧客を魅了し、アブノーマル社の企業価値は、わずか2年でTellApartを上回ることになった。
アブノーマル・セキュリティは11月18日、Menlo Venturesが主導し、既存出資元のGreylockが参加したシリーズBラウンドで、5000万ドルを調達したとアナウンスした。関係筋によると、サンフランシスコ本拠の同社の評価額は5億ドルを突破したという。
「セキュリティ業界では、ウイルス対策やスパム対策などの脅威インテリジェンスのバックグラウンドを持つ人々が主流だが、私たちは全く異なるアプローチをとっている」と、アブノーマル社CEOのライザーは話す。
同社は独自のテクノロジーで、サイバー犯罪者による「なりすまし攻撃」を防いでいる。この攻撃の一例として挙げられるのは、企業の財務責任者がCEOから緊急メッセージを受け取ると、「この銀行口座に1万ドルを送金するうように」と書かれているような事例だ。しかし、メールの送り主はCEOの名を騙る詐欺師なのだ。
アブノーマル社のソリューションは、既にゼロックスやAlliance Dataなどの数十社で活用されている。同社のシステムはOffice 365やG Suiteに統合可能で、企業は即座にAI(人工知能)に基づく脅威検知システムを利用可能になる。
不審なメールをAIで監視
マーケティング分野では、ユーザーの興味に基づいた広告をAIを用いて表示しているが、アブノーマル社は、アルゴリズムの力で組織内のメールのやりとりを監視し、不審な行動を検知する。さらに、コンピュータビジョンを用いて、特定の請求書やメールの依頼内容が、不正なものではないかを調べている。
アブノーマル社は設立から2年で急成長し、現在は約100人を雇用している。今後のさらなる拡大を目指す同社は、新たな資金で2021年末までに社員数を250人に伸ばそうとしている。ライザーは、同社のテクノロジーのコアである行動プロファイリングと異常検知システムをさらに拡大し、クラウドの安全性を確保するだけでなく、データの保護などの分野にも進出しようとしている。
「現在のアプローチはうまくいっている。私たちは、シリコンバレーで最も優れたマシンラーニング系の企業の1社になろうとしている」とライザーは話した。