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2020.12.04

SMALL GIANTSの街って何? 新連載・FJ編集長のコラボコラム

ものづくり体験・体感施設「みせるばやお」での子供向けワークショップ


前述した木村石鹸工業とインテリア・DIY商材の製造販売を行う八尾市の友安製作所が共同で「ウッドクリーナー&ワックス LOMA」という商品を開発した。その名の通り、床やテーブルを拭き掃除しながら同時にワックスがけができるという。この商品の開発が行われていることを、木村祥一郎社長は知らなかった。

木村石鹸工業側で開発を担当したのは「しのちゃん」という新入社員の女性である。異業種の2社がコラボをするきっかけとなったのは、「みせるばやお」という子供向けの体験ワークショップだった。八尾市と有志たちがものづくりの楽しさを子供たちに教えるためにつくった場だ。ここで従業員同士が意気投合したのである。

「お節介をしまくりました」


実は八尾市に製造業はあまたあれど、一匹狼の経営者が多く、大半の人が町のことに関心がなかった。「製造業の町」というせっかくの舞台に立ちながら、バラバラだった登場人物たちを引き合わせていった演出家が、「変態公務員」こと、八尾市経済環境部産業政策課の松尾泰貴係長である。

公務員らしからぬ行動力から「変態」と呼ばれているが、昆虫が幼虫からさなぎに変わり、成虫になっていく「変態」を支える意味でもある。



「町が元気になるために、お節介をしまくりました」と、松尾係長は笑う。

「お役所仕事という言葉がある通り、役所にはいいイメージがなかった」という太田社長は、「役に立つ役人をめざした」という松尾係長と出会って考えが変わった。12月10日から13日まで、八尾市の「みせるばやおメイン会場」をハブとして各35社の工場(八尾市、堺市、門真市、尼崎市、東大阪市内企業)で開催される「FactorISM アトツギたちの文化祭」という工場の祭典(オンライン視聴も可能)で、太田社長は実行委員長を務める。

「FactorISM アトツギたちの文化祭」はこちら>>

「こうばはまちのエンターテイメント」を合言葉に、ものづくりの現場を一般公開し、世界に誇る日本のものづくりの現場を体験、体感してもらう文化祭のようなイベントで「Factory(こうば)」、「ISM(主義や主張)」、「tourism(観光)」を掛け合わせた造語で、こうばのリアルを音やにおいなど五感を使って感じてもらい、エンターテイメントのひとつにしようという活動が展開される。


子供向けの体験ワークショップ

「街を編集するのが仕事」と、松尾係長は言う。「雑誌のタイトル風にいうと、スモールジャイアンツの街ですね」と私が言うと、松尾係長は「それ、使っていいですか」とすかさず返してきた。どんな舞台でもドラマでも、登場人物が一人で成長したり活躍したりするストーリーはない。コラボレーションを仕掛けるのが演出家や編集者の仕事である。

環境が激変する時代だからこそ、人のコラボを紹介し、ストーリーづくりに貢献したい。そんなコラムをForbes JAPANで発信していく。

文=藤吉雅春

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